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2010/09/02 09:33

コラム

[週刊BCN 2010年08月30日付 Vol.1347 掲載]

<BOOK REVIEW>『撤退の本質-いかに決断されたのか』

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 いけいけどんどんの流れにある場合は、リーダーのマネジメントはそれほど難しくはないはずだ。ところが、撤退となると途端に困難をきわめることとなる。リーダーの決断を鈍らすのは、撤退の対象となる部門の反発だろう。感情や思惑に左右されてリーダーの決断が遅れ、傷口を広げてしまうケースは、あらゆるシーンで散見される。

 本書は、各章ごとに軍事編と企業編に分けて、なぜ撤退がなされなかったのか、あるいは、見事な撤退はどのように行われたのかについての本質論を展開している。「事前に的確な見通しが必要」とタイトルづけされた第一章の軍事編では、「日本国民の誰一人として望まなかった英米との戦争になぜ突入したのか」のカギを握る出来事として、盧溝橋事件の対応のまずさ(早期収束できなかったこと)が挙げられている。同じ章の企業編では、ダイエーの拡大戦略の挫折が俎上に乗せられている。自己資本比率の推移データには、同社の売上高がピークに到達した1995年にはすでに危険信号が点滅していたにもかかわらず、不採算店舗の閉鎖、すなわち撤退の決断がなされなかったことが挫折の要因と指摘されている。

 一方で、撤退の成功例として、「キスカ撤収作戦」が、大東亜戦争における見事な撤収作戦として挙げられている。企業編では、IHI、ノキア、ブラザー工業、ニチロなどの事業転換が、好例として紹介されている。きちんとしたデータに基づいて分析された好著である。(止水)


『撤退の本質-いかに決断されたのか』
森田松太郎/杉之尾宜生 著 日本経済新聞社刊(857円+税)
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