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2012/11/08 09:03

[週刊BCN 2012年11月05日付 Vol.1455 掲載]

店頭流通

<家電激戦区を歩く ~ライバル激突で何が起きているのか~>【東京・新宿】vol.4 売れ筋商品 ~「ホームネットワーク」がポイントに スマートフォンの普及が後押し

 家電量販店の今年9月の売れ筋商品は、インクジェットプリンタ、デジタルカメラ、無線LAN機器だった。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」で販売台数前年同月比をみると、インクジェットが117.5%。デジタルカメラはコンパクトは98.3%と微減だが、一眼レフやミラーレス一眼のレンズ交換型が117.0%と好調だ。無線LAN機器は104.2%。この傾向は、東京・新宿地区の家電量販店でも同じだ。では、なぜ売れているのか。スタッフにその理由を聞くと、返ってきたキーワードは、家中を無線LAN環境にして複数の機器をつなぐ「ホームネットワーク」。そして「スマートフォンの普及」だった。(取材・文/佐相彰彦)

【インクジェットプリンタ】
スマートフォンの画像を印刷
簡単操作で買い替え需要が増える

 新宿では、インクジェットプリンタの展示に力を入れる家電量販店が多い。インクジェット機のユーザー層は幅広く、それが新宿地区の客層と重なるからだ。各店とも、主要メーカーのほぼ全機種を展示している。周辺に勤務する会社員などが、平日の昼休みなどに来店して、スタッフから製品の機能や用途をしっかりと聞いて、休日に購入するという流れができているという。その際、デモンストレーションを交えながら接客すると、購入に結びつきやすいということで、写真などの印刷見本を充実させ、用途提案を行っている。

 ヨドバシカメラ新宿西口本店では、スマートフォンと無線LAN環境でつないで画像を印刷するエプソンの「スマホカラリオ」を前面に出している。PCソフト・Mac専門チームの佐藤隆亮・マーケットイノベーターは、「インクジェット機を買い替えるお客様のほとんどが、スマートフォンの画像を印刷したいと考えている」と説明する。携帯電話やスマートフォンで撮影することがあたりまえになって、その画像をデータとして共有するだけでなく、次のステップとして「印刷」して共有するというニーズが生まれてきた。また、「今は、タッチパネルで簡単に操作できる機種がほとんど。デジタル機器に詳しくないお客様でも、抵抗なく購入していただける」という。さらに、「なかには文章だけを印刷したいというお客様もいて、高速印刷のモデルを提案するときもある」とのことだ。

 ヤマダ電機LABI新宿西口館では、「デザインと省スペースをポイントに挙げるお客様が多い」(村元公彦店長)と、5色のカラーバリエーションをもつキヤノンの「MG6330」や、省スペースのエプソンのフォトプリンタなどを提案。プリンタコーナーに無線LAN環境を構築し、「実際にワイヤレス印刷を体験してもらうことが、購入につながる」という。


スマートフォンの画像印刷をアピールする家電量販店が多くなった。カラーやデザインも購入のポイント(ヨドバシカメラ新宿西口本店)

【デジタルカメラ】
ミラーレス一眼に需要
一眼レフからの乗り換えも

 新宿地区で、デジタルカメラの品揃えが最も充実しているヨドバシカメラ新宿西口本店。デジタル機器と白物家電を総合的に扱う「マルチメディア東館」とカメラ関連商品を扱う「カメラ館」には、カメラに関する知識が豊富なスタッフを揃えている。その一人、カメラ専門チームの荒木貴史・プロダクトスペシャリストによれば、今年の傾向は「ミラーレス一眼の存在感が圧倒的に高まっている」ことだという。9月にキヤノンが「EOS M」で参入したことで、主要メーカーの製品が出揃ったという市場環境に加え、荒木スペシャリストは、「これまで、撮影にこだわる男性のユーザーが多い一眼レフ、男女を問わず手軽に撮影したいコンパクトというかたちで、客層が極端に分かれていた。ミラーレス一眼はその間を埋める存在になっている」という。ミラーレス一眼の購入者は、コンパクトからのステップアップだけでなく、一眼レフから“下りてくる”ケースもあるそうだ。ミラーレス一眼が、結果的にデジタルカメラ全体の販売増につながった。

 一方、コンパクトは「ミラーレス一眼は少し敷居が高いと感じているお客様には、高級コンパクトを提案すると購入につながりやすい」としている。

 一眼レフについては、「こだわるお客様が、さらに高機能で高額のモデルを購入する」という。コンパクトと一眼レフに関しては、ワンランク上のモデルがポイントになるようだ。

 デジタルカメラの販売を後押しするもう一つの要素が、「携帯電話とスマートフォンの普及によって、『撮影』が身近になった」(荒木スペシャリスト)こと。ワンランク上の写真を求めてこれらを卒業した層が、新たなデジタルカメラユーザーになりつつある。

ミラーレス一眼の存在感が高まっている(ヨドバシカメラ新宿西口本店)

【無線LAN】
複数端末の接続ニーズが主流に
簡単な設定も利用者層を拡大

 無線LAN機器が売れているのは、パソコンやインクジェットプリンタ、テレビやレコーダー、ゲーム機など、さまざまな端末が無線に対応して、ワイヤレスでつながる環境が整ってきたからだ。最近では、無線LAN機能を搭載したデジタルカメラも登場している。このなかで、購入の最も大きな決め手になっているのがスマートフォンだ。

無線LANでさまざまな端末がつながることをアピールしてユーザーの裾野を広げる(ヤマダ電機LABI新宿西口館)

 ヨドバシカメラ新宿西口本店で、無線LAN機器の販売を担当しているPCサプライ・アクセサリー専門チームの酒井学・ソリューションプロフェッショナル・グループリーダーは、「3Gなど携帯電話の回線は遅い。せめて家の中では、スマートフォンを高速ネットワークにつなぎたいというお客様が多い」と説明する。さらに、ここ数年、多くの無線LAN機器が簡単設定に対応するようになっていることも、普及の要因だという。

機器の使い方をわかりやすく伝えることで無線LANユーザーを増やす(ヨドバシカメラ新宿西口本店)

 こうした環境のなかで、ヨドバシカメラ新宿西口本店が重きを置いているのが「お客様の家に適した機器を提案すること」(酒井グループリーダー)。陳列棚に、「電波安定タイプ」や「電波超強力タイプ」などと表示して、「お客様が間違った機器を購入しないように、どのような家なのかをきちんとお聞きして、それに合った機器を提案している」という。

 ヤマダ電機LABI新宿西口館では、「無線LANでつながるスマートテレビ体験コーナー」を設け、スマートフォンをはじめ、テレビやレコーダー、パソコンがネットワークでつながるメリットを訴えている。

アナリストに聞く「売れる理由」
道越一郎エグゼクティブアナリスト

 BCNの道越一郎・エグゼクティブアナリストは、インクジェットプリンタについて、「値頃感が出ていることが売れている大きな要因」と説明する。BCNランキングによれば、昨年9月、約1万4000円だった平均単価が、今年9月には約1万2000円まで低下。年々、平均単価が下がっている状況で、手軽に購入できるようになったことが買い替え需要を促進している。無線LAN搭載のプリンタは、「昨年9月に全体の43.3%だった販売台数比率が、今年9月で75.3%を占めるようになった」と、もはやスタンダード機能になりつつある。また、無線LAN機器に関しては、「スマートフォンのほか、無線LAN機能を搭載したテレビやレコーダーがあたりまえになりつつある」と、ホームネットワーク化が進んでいる状況を説明する。

 デジタルカメラは、「低価格帯のコンパクトは、スマートフォンで事足りるということで厳しい状況が続く」というものの、「現在は高級コンパクトが注目を集めている。また、一眼レフとミラーレス一眼のレンズ交換型が、過去3年間で最高の水準に達している状況だ」という。

 さらに、道越エグゼクティブアナリストは、市場全体の状況を、「さまざまな機器がつながるホームネットワーク環境が普及し、デジタル機器同士がワイヤレスでつながっていく」と分析する。

家電激戦区「新宿」を歩いて

 国内屈指のターミナル駅を中心に、国内最大の家電量販市場をもつ新宿。ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダ電機、ドスパラが、各社の基幹店というべき店舗でしのぎを削っている。この地での成功は、全社の売上増に大きく寄与するだけでなく、業界内での主導権争いにも大きく関わってくる。それほどのポテンシャルをもつのが、新宿なのだ。各社各様の強みを生かして、この街がさらに活気づくことに期待したい。

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