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2013/08/30 11:01

インタビュー

「挑戦する権利・失敗する自由」というマインドを自ら実践する
――大谷真樹さん(八戸学院大学学長)(1/2)

 ITベンチャーの世界から八戸学院大学の学長に転身した大谷真樹さんは言う。「かつては、東京が可能性の象徴であり、青森・八戸はその対極にあると思い続けていたが、ベンチャー経営者としての仕事のなかで地方のアドバンテージを、それも自身の故郷に大きな可能性を見出すこととなった」と。それはたぐいまれな幸運であるとともに、新たな「人づくり」や地域の活性化に挑戦するための大きな原動力になっているように感じられた。【取材:2013年5月28日 東京・千代田区内神田のBCNオフィスにて】

プロフィール

大谷 真樹(おおたに まさき)
 1961年青森県八戸市生まれ。学習院大学経済学部卒業。日本電気勤務などを経て、市場調査会社インフォプラントを創業し、業界2位の企業に成長させる。2001年『アントレプレナーオブザイヤースタートアップ部門 優秀賞』受賞。2008年八戸大学客員研究員、2010年八戸大学・八戸短期大学総合研究所所長・教授、2012年八戸大学学長に就任。青森県総合計画審議会委員、八戸市後期総合計画審議会委員、青森県復興ビジョン懇話会委員、八戸ミュージアムポータルアドバイザリーボード、むつ小川原グリーンITパーク推進協議会会長。

「いま、最大の可能性をもっている地域は八戸です」と大谷さんは語る

 「千人回峰」は、比叡山の峰々を千日かけて歩き回り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借しました。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れることで悟りを開きたいと願い、この連載を始めました。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。

株式会社BCN 会長 奥田喜久男

<1000分の第91回>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。

「金を残すは三流、事業を残すは二流、人を残すは一流」

奥田 大谷先生は青森県出身ですが、八戸とはどんな関わりがあるのですか。

大谷 もともと私は八戸生まれで、父の仕事の関係で、高校卒業までは県内を転々としていました。当時、私は田舎が大嫌いで、八戸には可能性もチャンスも希望もないと思っていたんです。まるで吉幾三の唄の世界そのものです(笑)。現在のようなITの仕組みもないので、情報も東京に集中していました。可能性に挑戦するためには、夜行列車に揺られて花の都東京に出るしかなかったわけです。

奥田 田舎には否定的だったと。ところが、ずいぶんと宗旨替えをされて……。

大谷 いま、最大の可能性をもっている地域は八戸だと断言できます。起業した会社にもひと区切りつけて、再び八戸に関わりはじめたのは05年のことですが、このときはじめて自分の八戸に対する印象が逆転しました。ITの進展によって東京との情報格差はほぼなくなったこともあって、全国で最もポテンシャルが高いのは八戸だということに気づいたんです。

奥田 その理由は?

大谷 まず、製造業にとって大事なポイントであるインフラが整備されていることが挙げられます。高速道路は東京と直結していますし、新幹線でも東京から2時間50分台、三沢空港もすぐ近くにあります。そして、八戸工業港は国際物流の一大拠点です。このように重要なインフラが一点に集中している都市はあまりありません。これは八戸の大きなアドバンテージだと思いますね。

奥田 でも、冬は大変そうですが……。

大谷 青森県というと「津軽海峡冬景色」のイメージが強いと思いますが、八戸は太平洋側の気候なので雪が少ないんです。ですから雪に対する心配はありません。もう一つ重要な要素は人材ですが、地元に若者がけっこういるんですね。市内には、私たちの八戸学院大学、八戸工業大学、そして八戸高専と三つの高等教育機関があり、近隣の十和田市には北里大学もあるので、この地域全体で5000人ほどの学生が在籍しています。商圏人口も60万人ほどありますから、東北では仙台、郡山に次いで3番目なんです。ですから、八戸にはインフラ、人材、経済圏の三つがバランスよく揃っているといえます。

奥田 ところで、なぜ八戸に戻って大学の先生になることになったのですか。

大谷 きっかけは、1996年に創業したインフォプラントというIT企業のデータ処理部門を都心から地方に移行しようとして、多くの都市をリサーチした結果、それが八戸に決まったということですね。偶然、故郷に事業所を設けることになったわけです。

 2005年から地元採用や地域活性化のアドバイスなど、いろいろなかたちで地域に関わるようになって、大学、役所、商工関係とのつながりができました。その後インフォプラントはヤフーに買収され、私は07年に完全引退したのですが、そういった地元とのご縁もあり、08年にいまの八戸学院大学の客員教授になったんです。引退して、いろいろなオファーをいただいたのですがどうも興味が湧かない。そんなとき「金を残すは三流、事業を残すは二流、人を残すは一流」という言葉を先輩経営者から聞き、それならば自分がもう一度会社経営するよりも、これから起業する人を何人も育てることが自分の天命ではないかと考え、地域を担う人材育成に携わろうと決意したわけです。

10年で100人の経営者を育てる

奥田 具体的には、どのようなかたちで人材を育成するのですか。

大谷 2009年から起業家養成講座を開いています。これは、学生はもちろん、社会人にも開放しています。将来起業を目指す学生や事業モデルを変えようとしている経営者が受講しており、15人から20人程度の少人数でみっちりと事業計画、ファイナンス、マーケティングなどの課題に取り組んでいます。私自身、経営へのアドバイスも直接しますので、かなり深く実践的な講座となりました。延べ120人ほどが受講し、そのなかから17人の社長が生まれ、まだまだこれからですが新聞に登場するようなユニークな事業モデルも出ています。

 さきほど八戸の可能性について触れましたが、農業や漁業や観光といった古い業界にこそイノベーションのヒントがたくさん潜んでおり、いろいろな意味でチャンスがあると思います。東京には膨大な情報があるものの、やり尽くされた感があって、どんなに頑張っても突き抜けるのはなかなか難しい。でも八戸では、頑張り次第で突き抜けられるという感触があります。

 いま8期生まできましたが、先輩が身近なモデルになってくれるので、それが起業への大きな動機づけになります。大谷のもじりで「八戸ビッグバレー」という起業したOBを含めた会合を定期的に開催していて、いつもみんなすごいエネルギーを発散していますね。私自身は「10年で100人の社長をつくる」と宣言していますので、あと5年、18年末までにその目標を達成する予定です。

奥田 そして、昨年、学長に就任されました。

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