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2016/02/18 09:24

インタビュー

[週刊BCN 2016年02月15日付 Vol.1616 掲載]

経営で大切なのは「浮利を追わず」です(上)
(株)システム コンサルタント 取締役社長 木下 仁

 「創業から30年率いてきた会社を離れます」と聞き、ぜひ取材をとお願いした。その直後、木下さんには新たな展開があった。取材当日、新しい名刺を携えた木下さんは、新会社の資料を広げながら「あれ?こっちだったかな」といいつつ説明をしてくれた。この次にお会いしたら、きっと立て板に水の如く、滔々と説明されるに違いないのだが、今のその姿がなんとも新鮮で、めったにない木下さんをみせてもらった気がして、ちょっと楽しかった。(本紙主幹・奥田喜久男  構成・浅井美江  写真・動画・岡島 朗)

プロフィール

木下 仁(きのした じん)
 1955年生まれ。東京工業大学理学部応用物理学科卒業。三菱総合研究所を経て、85年、アステック設立。代表取締役社長に就任。97年事業子会社インターネット・ソリューションズ設立。2000年組織を再編し、アステックを持ち株会社に移行し、事業子会社三社を立ち上げる。同年、アールワークス設立。12年M&Aにより、アイテック阪急阪神が親会社となる。15年アールワークス社長を退任。同年10月、システム コンサルタントの社長に就任。

2015.11.25/BCN22世紀アカデミールームにて

心に響く人生の匠たち

 「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。

株式会社BCN 会長 奥田喜久男

<1000分の第154回(上)>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。

3年・30年・60歳でやってきたタイミング

奥田 毎朝、会社の幹部と打ち合わせをしているんですが、今度木下さんと対談するよと話したら、「あの男前の?」とメンバーの一人が言ってました。

木下 本当ですか。うれしいなぁ。よろしくお伝えください(笑)。

奥田 アールワークスの退任告知をいただいた時は、「ああ、これで木下さんも悠々自適の人生を送るのかな」と思っていたんですけど、すぐに(株)システム コンサルタント(シスコン)の社長に就任されたという知らせをいただいて。私の気分の落差は大きかったですね。

木下 そうおっしゃる方もいらっしゃいますね。アールワークスは3年前に、阪急阪神グループの傘下に入ったんですが、その時、3年はやってくれという約束で。でもそれは、3年経ったらいいよという話でもあるわけです。ちょうどそんな時にシスコン、省略してそう呼びますが、お声がけをいただいわけです。9月の株主総会を経て、10月の頭に就任しました。

奥田 さすが…。売れっ子は違いますね。退任されたアールワークスは、木下さんが創業者ですよね。

木下 もう少し正確にいうと、1985年にアステックという会社をつくったんです。で、ちょっと制度設計に凝ったというか、アステックを純粋持ち株会社にして、パッケージや運用など四つの会社を置いたんです。でも、これがものの見事にうまくいかなくて。

奥田 けっこう、理念先行型ですか。

木下 当時はそうでした。若かったこともあって。それで、結局全部一緒にして、さらにその後、存続会社をアールワークスにしたんです。2000年のことでした。前身の会社が85年設立ですから、2015年でちょうど30年だったわけです。同じ年に私が60歳。さらにM&Aからちょうど3年でした。これはタイミングとして潮時かなと。

奥田 それでシスコンに行かれたわけですか。

木下 まあ、新しいチャレンジは個人的にもしたかったということもありました。

奥田 意地悪な見方をすると、つくった会社を売却してキャピタルを手にして、好きな事業は別物にして続けるという……。

木下 いやいや。まだアールワークスの株主なんです。15%ですが。

奥田 あれ、全額売却じゃないんですか。じゃあ、楽しみでもあるわけですね。ところで、シスコンの社長としてはどんな立場なんですか。

木下 今は取締役社長ですが、これまで事業を培ってこられた方が代表でいらっしゃるので、いわゆる“社長”として私が全部みていくというのとはちょっと違いますね。

奥田 立ち入ったことをうかがいますが、株はもっておられるんでしょうか。

木下 もってないんです。こういう立場というか、経験は初めてなので、なんかこう居心地が悪いというか、これまではリスクを取るのがあたりまえだったから。普通の大企業で出世して社長になれば、それが普通なんでしょうけど、私は違いますから。

奥田 身の置き方というか、心の置き方が違うんでしょうね。でも慣れると楽かもしれませんよ。

木下 うーん。楽かもしれないけど、それに慣れていいのかどうか……。

奥田 (笑って)そこが木下さんらしいというか。

木下 まあだから、やれることをやっていこうと思っています。還暦にもなったんだし、あまり肩肘はらずにやるのが一番かなと。

奥田 そう自分に言い聞かせている(笑)。

木下 まさにそういう感じです。

シスコンの経営信条は、独特なんです

奥田 では、シスコンの話を聞かせていただけますか。

木下 67年創業ですので、15年で48年目になります。いわゆるソフト会社創生の第一世代ですね。

奥田 67年というと、僕はまだ大学一年です。

木下 現在、代表でおられる方ともう一人、亡くなられた方のお二人で創業されたんです。独特な経営信条がいくつかあって、例えば、株は公開してない。私が承認された株主総会でも、出席者が100何人いるんですが、みんな社員です。

奥田 株主の構成ってどうなっているんでしょう。

木下 一番おもちなのは代表ですけど、ちょっとよくわからないというか……。

奥田 そういうこと聞かないで社長になられたんですか。

木下 いや、聞いてはいます。聞いてはいるけど、細かいことはあまり……。

奥田 木下さんておもしろいなぁ。まあ、財務内容をみて、決算書がよければいいんですけどね。

木下 会社が誰のものかというと、IPOを目指していると、株主のものと答えないといけないじゃないですか。でもそれもどうかなと。株主のものではないとはいわないけど、株主のものでもあり、社員のものでもある。さらにいえば、お客さんのものでもあると思うんです。だから、シスコンの会社のやり方は共感できるものでもありますね。

奥田 そうすると、シスコンの経営方針に共鳴して、社長に就かれたということですか。

木下 ほかにもあります。社員はみんな新卒です。中途採用は一切しない。そして、お客様は全部エンドユーザーで、伝統的な大企業が中心です。仕事は直取引で間にどこも入っていない。下請け的な事業もしません。

奥田 それはすごい。

木下 そういうことを50年近くに渡ってやり続けてきたという実践力、継続する努力や信念があった、ということへのリスペクトですかね。

奥田 株式を公開しない、社員の持株でやる。新卒を採用して育てる。

木下 それから直接取引。

奥田 みんな一次卸ということですよね。しかも、古参のSIerで堅持されているのはすごいことですね。

木下 まだあります。継続して投資をしていくこと。例えば、(と資料をみせながら)インドのバンガロールの北西にあるトムクールというところに開発センターがあるんですけど、1万坪近い敷地に、ゲストが泊まれる建物があって、宿泊して研修を受けていただくこともできるんです。

奥田 これは何年前に建てられたんでしょう。

木下 10年前くらいに現地法人をつくりました。僕はちょっと縁があって、アールワークスの時代にも3回ほど行っています。

奥田 そういうおつき合いもあったんですね。

木下 日本電子公証機構という子会社もあります。社名の通り、情報の真正性を証明する電子公証サービスを行っています。電子的な契約はこれから大きなビジネスチャンスがくると思います。

奥田 ここは何年前から?

木下 平成12年設立ですから、10年以上ですね。こういうことにコツコツと投資をし続けるのがすごいです。

奥田 シスコンの経営者が大切にしている信条はなんですか。

木下 「浮利を追わず」でしょうか。浮ついた利を追わない。お客様の企業価値に貢献するという理念もあります。

奥田 創業者の方々は、こういう理念を産み出すための源みたいなものをもっておいでなのでしょうか。

木下 そこはたぶん、人生観に近いんじゃないですかね。(つづく)


トンネル内で20時間を過ごしたあの日のチケット

 東日本大震災当日。仙台からの帰京途中、木下さんが乗った新幹線はトンネル内で停車した。情報も何もない暗闇のなか、乗客はパニックに陥ることもなく周囲を気遣い、降車の際も整然と列をなした。木下さんはその姿に感銘を受けたという。

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