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2016/12/26 09:05

インタビュー

[週刊BCN 2016年12月19日付 Vol.1658 掲載]

自分にも社員にも嘘はつきたくない 言ったことは必ず守ります(下)
弥生株式会社 代表取締役社長 岡本浩一郎

 ご自身のブログでも何度か書かれているが、岡本さんはコンサルタントの仕事を「荒野のガンマン」にたとえる。曰くガンマンには2種類あって、荒くれ者たちの出現で危機に陥った村を救った後、静かに去っていくタイプと、村に残ってみんなと生きていくタイプ。岡本さんは完全に後者だという。「結局、惚れっぽいんですかね」と、少し照れながらその話をする岡本さんの後ろで、クリント・イーストウッドがニヤリと笑った気がした。(本紙主幹・奥田喜久男  構成・浅井美江  写真・長谷川博一)

2016.11.2/弥生本社会議室「丸の内」にて

心に響く人生の匠たち

 「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。

株式会社BCN 会長 奥田喜久男

<1000分の第174回(下)>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。

荒くれ者を退治した後も村に残るガンマン

奥田 オリックスグループの傘下に入られたのは、いつでしたか。

岡本 2年前。2014年です。

奥田 あの時は衝撃が走りましたね。いつ頃考えてその方向に行かれたのでしょう。

岡本 オリックスに関していうと、ずっと弥生に関心はもっていただいて、インテュイットやライブドアの時代から、グループに入ってもらえないかと考えていたようです。でもその時点ではご縁がなくて。こういうことは結局ご縁なので、オリックス同様われわれもそうしたいと思ったタイミングがちょうど2年前ということですね。

奥田 正直言いますとね。あの時、岡本さんはお辞めになるのかと思っていました。

岡本 そうですか……。私自身は社長を継続することにまったく不思議はなくて、やりたいことがあって弥生を率いているわけですし、オリックスグループに入ることによって、弥生ができることがより拡大するのに、そのタイミングで卒業するのはもったいないですよね。

奥田 残る決断をされた岡本さんをみて、やはり弥生に魅力を感じられているのだと思いました。

岡本 それはそうです。そもそもオリックスグループに入る前の段階で6年半も社長でいるのは、弥生や弥生の従業員、そして弥生のお客様に対して愛情がなければ続けられません。

奥田 弥生のどこに魅力を感じたのでしょう。

岡本 一つはお客様です。いわゆる小規模事業者の方々に圧倒的に支持をいただいている。日本の事業者数の約87%がそういった事業者の方々です。いわば日本の経済のベースを支えているといってもいいでしょう。そういうお客様をわれわれが支えていると考えると、社会的な意義は非常に大きいと思います。後は、そういうお客様のために何ができるかということを一緒に考えて実現していける仲間(社員)。彼らが本当に大切だし、愛着があります。

奥田 岡本さんは愛着があっても、プツンと切り離せる類の人かなと思っていたんですけど……。コンサルの人ってそういう感じじゃないですか。

岡本 経営コンサルって二通りいて、一つめのタイプはおっしゃるように切り替えが上手な人。今回はこの業界、次回はまた別の業界と、いろんなプロジェクトをやるのが楽しいタイプ。もう一つは、関わった会社や人に愛着をもってしまうタイプ、プロジェクトが終わっても、大丈夫かな、心配だな、もっとお手伝いしたいなと思ってしまうタイプ。どちらがコンサルの王道かというと、前者です。

奥田 そうですよね。だから岡本さんはどこかで宗旨変えをされたのかなと。

岡本 私は確実に後者なんです。コンサルを「荒野のガンマン」にたとえることがあるんですが、村に荒くれ者達がやってきて危機に陥った。そこにヘルプでガンマンがやってきて、悪いやつらを退治する。村のみんなが平和になってよかったよかったと喜んでいる時にはもうガンマンはいない……それが本当のコンサルです。

奥田 おもしろい例えですね。

岡本 それはそれですばらしい仕事だと思うんですが、私は悪いやつらを退治した後も、村に残ってみんなとともに生きていきたいと思っちゃうんですね。

奥田 岡本さんはそういう方だったんですね。

弥生とMisocaが一緒になって3月31日は「経理の日」

奥田 ともに生きたいと思った弥生について、経営者としてはどんなゴールを目指していらっしゃいますか。

岡本 定量化はなかなか難しいのですが、どれだけお客様に信頼されているかという部分、いかに信頼され、選ばれているかは大きなポイントだと思います。そのためにはシェアはみなければなりませんが、いわゆる安売りでシェアを上げるのではなく、きちんとお金を払っていただいて、そのうえでシェアが取れているということが重要ですね。本数ベースだけではなく、金額ベースも当然みていますが、ある意味売り上げ以上に注視している部分ではあります。

奥田 確かにその定量化は難しいですね。

岡本 ミッションとして、日本の中小企業、個人事業主、起業家の事業を支えるインフラになりたいと思っているんです。インフラというのは電気や水道、道路など基本的にみんなが使うもの、使っていてあたりまえだし、かつリーズナブルでないと成り立ちません。何をゴールにするかというと、単純な売り上げでもないし、シェアはもちろんみますが、本当にわれわれがインフラと呼べる存在になっているかどうかでしょうか。

奥田 事業規模については、どのくらいまで行くとイメージされていますか。

岡本 いろいろ拡げていかないといけないとは思っています。現在の売り上げが160億円ちょっとで、順行速度で行っても200億円は超えていくと思うので、そこから幅を拡げて500億円は当然目指すべきだと思いますね。

奥田 その時、事業の柱はどうなりますか。

岡本 これまではデスクトップのパッケージ販売とその保守。この保守サービスが大きいです。新たな柱として立てているクラウドサービスを、保守サービスと同レベルにまで上げて行きたいです。さらにより業務に直結したサービスを提供していきたいと思っています。

奥田 前回お話しいただいた仕訳相談とかでしょうか。

岡本 仕訳相談はある意味そうです。別の例でいうとこの2月に買収したMisocaという会社。ここはクラウドで見積書や請求書を作成し、請求書を郵送したらいくらかいただくようになっています。将来的には、見積書に対し発注を受けたらいくら、売り上げの入金の確認ができることでまたいくらという形で、お客様の業務のなかに組み込まれたタスクが発生するたびに課金をさせていただくというサービスを展開していきたいと考えています。

奥田 Misocaは月末という意味ですね。おもしろい社名を考えましたね。

岡本 弥生にならってMisocaと命名したそうです(笑)。弥生が3月、Misocaが31日ということで、一緒になった記念に何かやりたいなと思って、日本記念日協会に「3月31日は経理の日」と申請をしたところ、めでたく認められました。弥生とMisocaが一緒になったシンボルとしての「経理の日」です。

奥田 楽しいことを考えますねえ。ちょっとヘンな言い方になるかもしれないけど、売られていく価値のある会社ってあるでしょう。これまでの弥生はそういうところにいたように思う。でも、今日岡本さんの話をうかがって、そうではない方向、自分たちで育てていくという会社になったんだなと思いました。今日お話しできてよかった。もう少しうかがいたいことがあるんだけれども、これはまた次の機会ということで(笑)。ありがとうございました。

こぼれ話

 居酒屋の話で始めるのはいささか恐縮だが、私は店の主人が和やかなお店が好きである。高級な店であろうが原価に近い料金の角打ちであろうが……。例え齢九十の“ばあちゃん”であっても「いらっしゃい」とコップ酒をなみなみと満たしてくれると、『週刊BCN』と同じサイクルで立ち寄ってしまう。

 その店には常連がいて、フリースペースのオフィスに似て席が暗黙のうちに決まっている。時には定年退職者が久しぶりに顔を出そうものなら、ばあちゃんも客も華やいで、何だかホッコリ気分で家路に着く。

 こんな会社をつくりたいと思いながら35年たった今も、時おり社内が騒然とする時期がある。社員には申し訳ない気持ちがいっぱいなのだが、風邪と似て引いてしまうことがある。短期間に治る時もあるが、こじらせて注射を打ってもらう時もある。さらにこじらせて肺炎なみの症状を一度経験すると、風邪の怖さが身にしみる。新聞記者という職業柄いろいろな会社を訪ねる。風邪気味の会社の場合はそこそこで退散する。


 「弥生」という製品名は日本マイコン販売の創業者小池隆彦さんが名付け親だ。彼が東京に居を構える時、「東京には弥生町が2か所あってね」と楽しそうに語っていた。そんな愛着ぶりが好きで大阪に出かけると必ず立ち寄った。岡本さんから同質のオーラが伝わってきた。

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