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2017/02/06 09:03

インタビュー

[週刊BCN 2017年01月30日付 Vol.1663 掲載]

ストックビジネス比率を高めパートナーとともに歩む(上)
ピー・シー・エー 専務取締役営業本部長 折登泰樹

 折登さんの新入社員時代、めし屋のおばさんを怒らせてしまったエピソードを聞いた。大阪に赴任して間もない頃、「たぬき」を注文したのに「きつね」が出てきて文句をいったら、丼いっぱいの天かすをドンと置かれて、「こんなもので大阪人は金とらんから」と。大阪で「たぬき」といったら東京でいう「きつねそば」が出てくることを学んだわけだが、商売の基本やパートナーを大切にする考え方も若き日に大阪で学んだという。それから40年、そのビジネスマインドはいまも生かされているようだ。(本紙主幹・奥田喜久男  構成・小林茂樹  写真・長谷川博一)

プロフィール

折登 泰樹(おりと ひろき)
1953年3月、東京生まれ。76年3月、慶應義塾大学商学部卒業後、マルマン入社。85年6月、ミルキーウェイ入社。社長室長。91年4月、同社取締役営業部長。97年5月、インテュイット設立に参画。2000年1月、ピー・シー・エー入社。販売推進部長。01年6月、取締役販売推進部長。02年4月、取締役営業本部長。03年4月、常務取締役営業本部長。06年4月、専務取締役営業本部長に就任。

2016.12.14/東京・千代田区のピー・シー・エー本社にて

心に響く人生の匠たち

 「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。

株式会社BCN 会長 奥田喜久男

<1000分の第177回(上)>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。

大阪での営業マン時代に身につけた商売のコツ

奥田 折登さんとはもう30年来のおつき合いですが、社会人のスタートはIT業界ではないんですね。

折登 大学を出て最初に入ったのはマルマンというゴルフクラブをつくっているメーカーで、ここに9年間お世話になりました。

奥田 その原点の時代について、お話しいただけますか。

折登 大学を卒業して4月に入社し、1か月ほどの簡単な研修を受けた後、5月の連休明けには営業マンとして大阪への転勤を命じられました。

奥田 初めての関西ですか?

折登 そうです。この大阪に赴任していた4年間は、人生のなかで一番勉強になりましたね。大阪は都合5年住みましたが、第二の故郷です。

奥田 折登さんを見ていると、江戸っ子というより関西人に近いかなと……。

折登 そういうところが残っているんでしょうね。新幹線で米原をすぎると関西弁になっちゃう人だから(笑)。

奥田 担当地域はどのあたりでしたか?

折登 支店が新大阪にあり、担当エリアは大阪、奈良、和歌山の1府2県でした。

奥田 ということは、商いのメッカで相当鍛えられたんじゃないですか。

折登 新卒ホヤホヤで営業に出されて、ここで商売のコツというか勘所を学ばせてもらいましたね。ゴルフショップやスポーツ用品の量販店を担当していたので、そこの担当者や店主相手に商談をするのですが、当時は外国製のゴルフクラブが高いブランド力を持っていた時代でした。国内メーカーでは、強力なブランド力を持つ王者「美津濃」、プロゴルファーから評価の高い「本間ゴルフ」、マルマンゴルフはカーボンシャフト・メタルヘッドなど新しいテクノロジーを数多く製品化しましたが、3番手メーカーでした。それを売り込みに行くのですが、「おまえのところのクラブで打つと、火ついちゃうからな」といわれていじられたりしました。マルマンはライターもつくっていましたからね(笑)。

奥田 トップメーカーに伍するために、どんなことを考えられていましたか?

折登 振り返ってみると、私は常に2番手、3番手のメーカーにいたわけです。身の丈を考え、トップになることにそれほど興味はありませんでしたが、なくてはならない会社であり続けなければならないという思いは、いまもずっと変わりません。

奥田 なるほど、そうした思いをもちながら商売のコツをつかんでいったわけですね。

折登 販売店への営業のほか、百貨店のバーゲンの応援に行って、店頭で売り子をやったこともありました。あるとき、ゴルフクラブを見ていたお客さんが私を呼んで、「兄ちゃん、これなんぼになるの?」と。9800円という値札が貼ってあるんですよ。

 有名な百貨店で、それもバーゲン会場で値切ろうとするお客さんがいるというのは新鮮な驚きでした。仕方がないので、売り場の主任さんに聞くと「放っておけ」と。それで「やっぱり、無理みたいです」と答えるとその場を離れるのですが、また1時間くらいしたらまた戻って来る(笑)。日本橋の電器街などでは値切るのはあたりまえですが、百貨店でも臆せず値切る関西人はしぶといなと思いましたね。

奥田 まさにカルチャーショックですね。それで、その値切ったお客はどうなりましたか?

折登 正札で買って帰られました(笑)。そうした商売の駆け引きというか、例えば「これだけ買ってくれたらここまで下げますよ」とか、丁々発止のやりとりをしながら商売をまとめるコツを、この大阪時代に覚えました。学生時代に学んだマーケティングの知識は、実務経験を積んだ30歳くらいになって、「あれはこういうことだったのか」と初めて納得できるものなのですね。

ベンチャー企業の「なんでも屋」に転身する

奥田 その後、コンピュータ業界に入られます。

折登 マルマンではゴルフクラブの営業を何年かやった後に本社に異動し、工場の生産計画にも携わりました。毎月、どのクラブを何本つくるかということを、縦横集計の表にまとめるのです。それを手作業でやっていたのですが、あるときIBMの5550という端末が導入され、そこにマルチプランという表計算ソフトが搭載され、数字を入力して再計算を押すと、全部、縦横が合ってしまう。こんな便利なものが世の中にあるんだと思ったのが、コンピュータ業界に興味をもったきっかけです。

奥田 会計ソフトのミルキーウェイに移られたのは?

折登 たまたまミルキーウェイの創業者3人は、慶應義塾志木高校時代からの同級生でした。事務所が東京・御茶ノ水の駿河台下にあり、私も仕事でその界隈のスポーツ用品の量販店によく足を運んでいたので、その帰りに顔を出して話を聞いたのがきっかけですね。 奥田 それで一緒にやろうと。営業担当として入られたのですか?

折登 営業というより、なんでも屋ですよ。まだ社員が10人くらいしかいませんでしたから。

奥田 そんなに少なかったのですか。

折登 私がミルキーウェイに入ったのが1985年6月ですが、創業は1980年。まだまだベンチャーの域を出ていません。奇しくも、それぞれ公認会計士が創業者となって会計ソフトを開発してきたPCAもOBCも1980年の創業です。

奥田 ミルキーウェイも公認会計士が創業したのですか。

折登 創業メンバー3人のうち2人は公認会計士ですね。

奥田 折登さんも挑戦したの?

折登 しないしない。簿記の1級で挫折しました(笑)。

奥田 それで、“なんでも屋”ということですか……。

折登 転籍して感じたのは、まだ、会社の体をなしていないということでした。それまでいたマルマンはそれなりに組織立った会社でしたから、いろいろな規則や仕事の進め方が確立していましたが、そういうものがほとんどないわけです。いまでいうコンプライアンスやガバナンス以前の問題で、まったく対処できないような状況でした。

奥田 そこで、具体的にはどんな仕事をされたのでしょうか?

折登 最初についた役職は社長室長です。とはいえ、社長付というイメージではなく、社長が開発に専念していたため、要は営業と開発以外のことは全部やれということ。当時、そんな小さなベンチャー企業に社員として来てくれる人なんていませんでしたから、まず採用が至難の業でしたね。

奥田 じゃあ、中小企業の社長みたいなことをやっていたと。

折登 そうかもしれません。人事、採用、総務、経理、資金繰り、広報宣伝と、そういう仕事を全部やっていました。それ以来、私はずっと歴代社長にものをいえる立場にいました。ときには諫言もし、ぶつかることもありましたが、その姿勢はいまも変わりませんね。

奥田 やっぱり経営者なんだ。それで、会社としての形を整えていったわけですね。

折登 だから、いまでも給与計算くらいできますよ。年末調整もできるし、源泉徴収票もつくれます(笑)。(つづく)

ハリーポッターと司馬遼太郎

 日経新聞や経済誌には毎日目を通すものの、難しい本は疲れるので『ハリーポッター』のようなエンタテインメント性の高い作品が好きだと折登さんはいう。隣りにある司馬遼太郎作品はエンタメとビジネスの両方に効用があるのかも。ご自身のフィギュアは還暦祝いに部下の方々から贈られたお気に入りだそうだ。



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