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2017/02/13 09:03

インタビュー

[週刊BCN 2017年02月06日付 Vol.1664 掲載]

ストックビジネス比率を高めパートナーとともに歩む(下)
ピー・シー・エー 専務取締役営業本部長 折登泰樹

 折登さんのビジネスの足跡をつぶさにうかがうなかで、あることに気づいた。それはIT業界に転じてから、つねに経営の中枢に位置しながらも代表権をもったことがないことだ。社長並みの責任を負う局面も少なからずあったはずだが。それについてたずねると「どこの会社でも、営業のトップってそんなものじゃないですか。会社の屋台骨を支える役割だから」とさらりと返された。それが、経営者を支える真のプロフェッショナルの姿勢なのだろうと、いまさらながら得心した。(本紙主幹・奥田喜久男  構成・小林茂樹  写真・長谷川博一)

2016.12.14/東京・千代田区のピー・シー・エー本社にて


心に響く人生の匠たち

 「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。

株式会社BCN 会長 奥田喜久男

<1000分の第177回(下)>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。

難航した外資とのビジネス&コミュニケーションギャップ

奥田 折登さんは、ミルキーウェイで10年間活躍された後、米インテュイットの日本法人の設立に参画されますね。

折登 ええ、初めての外資とのかかわりです。

奥田 設立に至るまでの経緯は。

折登 クイックブックスという会計ソフトをもつ米インテュイットが日本市場に進出するために、まず、1996年にミルキーウェイをM&Aして、インテュイットジャパンをつくりました。ところが、ミルキーウェイだけでは開発のリソースが足りないということで、さらに大阪が本社であった日本マイコン販売をM&Aしました。それが97年5月のことです。

奥田 外資を含めた3社が合併したということですね。そのときの主力製品はなんだったんですか。

折登 当時、ミルキーウェイの主力製品は大番頭、日本マイコン販売は弥生、インテュイットはクイックブックスでした。しかし、合併して3社それぞれにプロダクトがありますので、そこで製品統合という話が出てくるのですが、これがまた難しいんです。

奥田 ミルキーウェイの大番頭は、当時どれくらいの価格でしたか。

折登 大番頭が20万~25万円、弥生は6万~8万円くらい。インテュイットは廉価版を出してたくさん売ろうという考え方だったので、結局、弥生にプロダクトを統合しました。だから大番頭のユーザーにも、むりやり弥生にリプレースしていただくようなこともしたんです。

奥田 クイックブックスはどうなったんですか。

折登 クイックブックスはそのブランドで売り出したのですが、日本の商慣習をほとんど考慮していないつくりなので日本の市場では受け入れられなかった。例えば、大福帳のような掛売りの文化は日本では必須ですが、米国にはそういう文化はないんです。基本的に信用取引はなく、キャッシュオンデリバリ、あるいは前払いという文化です。それを本国のPM(プロダクトマネージャー)にこんこんと説明したのですがなかなか理解してもらえない。「なんでそこで売掛けにしちゃうの。お金もらえばいいじゃん」というので、それは日本の商慣習では無理だから、という話を何度もしましたね。

奥田 その後、折登さんは2000年にPCAに移られますね。理由はなんだったのですか。

折登 インテュイットで4年ほど外資を経験しましたが、経営判断があまりにも性急で、じっくり仕事ができないというジレンマがありました。短期間で結果を求められるじゃないですか。当時、私は四半期ごとにシリコンバレーのパロアルトに行って業績報告していたんですよ。

奥田 かっこいいね。

折登 かっこいいでしょ。たいして英語もしゃべれないのにね(笑)。

急がれるオンプレミスからクラウドへの転換

奥田 比較的生え抜き社員が多かったPCAですが、折登さんの目にはどう映りましたか。

折登 正直なところ、いろいろな面で仕組みがかなり遅れているなと思いました。だから、最初の5年間は改革・改善の連続でした。例えば、保守契約の推進の仕方、プロダクトライフサイクルの考え方、製品力を補うための外部製品との連携強化、製品の導入支援を行うユースウェア認定店の開拓・整備など、いろいろなことに取り組みました。

奥田 事業経営のコツがわかっていなかったということですか。

折登 コツというか、それなりにはやっていましたが、「それじゃもったいない」という感じ。「こうしたらもっとよくなるのに」という改善点がいっぱいあったんです。

奥田 ミルキーウェイに移ったときと状況が似ていますね。PCAに移られてから、自分の打ち手で成功したと思われたことはありますか。

折登 何が成功かと言われてもあたりまえのことをやってきたので、とくにそのような思いはありません。業績面では、14年春の消費税率変更とWindows XPのサポート終了で、前年比40%増を達成しましたが、外部環境の変化が要因なので、とくに満足感はありませんでした。むしろ、年度末に予算をぎりぎりで達成できたときのほうが「やったな」という思いはあります。

奥田 ところで、いまも現場に出て営業をすることはありますか。

折登 担当営業に同行することはしませんが、基本的にはなるべく外の人の話を聞くようにしています。毎年「戦略フォーラム」というイベントを10月半ばから12月初旬にかけて全国で開きます。これには全部行きました。おいでいただいたパートナーの話を聞くことがとても重要だからです。北海道で聞いたこと、大阪で聞いたこと、九州で聞いたこと、いろいろな地域パートナーのご意見からトレンドがみえてきます。

奥田 具体的に何がみえてきましたか。

折登 そろそろ、「クラウドに本格的に取り組まないとまずい」という空気が出てきたことです。パートナーはクラウドに対してまだ消極的で、むしろクラウドに対する意識はユーザーのほうが進んでいる傾向にあります。それには理由があります。ユーザーはオンプレミスとのコスト比較をしますから、クラウドのほうが有利なことをすでに理解しているのです。

奥田 クラウドになったとき、パートナーの事業はどんな形に変わるのでしょう。

折登 ストックビジネスですから、イニシャルで大きな利益が出る収益構造ではなく、毎月毎月課金する形で積み上がっていくわけです。でも、そのほうが経営的には安定します。PCA自身をみても、クラウドの売り上げはもちろんのこと、以前からあるパッケージの保守契約もストックビジネスなので、いま、全体の4割くらいをストックビジネスが占めています。

奥田 保守は何%くらいですか?

折登 保守のほうがまだ多く25%くらい。クラウドが15%くらいです。

奥田 何年先くらいに、このクラウドの15%は保守の数字に追いつくのでしょうか。

折登 あと2、3年で追いつくでしょう。

奥田 50%がストックビジネスというのはすごい安定感ですね。それをパートナーにも勧めておられるということですか。

折登 そうですね。

奥田 ところで、直販に対してはどういうお考えでしょうか。

折登 そういう話はアナリストなどからも聞かれるのですが、直販を行うためにはかなりの営業リソースが必要ですし、パートナーとともに歩んできたわれわれのようなソフトベンダーは、それをやってはいけないのだと思います。

奥田 そこは律儀に、これまでの仁義は守るということですね。

折登 当社はチャネルのみなさんに支えられているところが大ですから。

奥田 なるほど、日頃の発言からもそういうところを大切にしておられることが伝わってきます。折登さんからそういわれれば、パートナーとしては安心ですね。

こぼれ話

 もう30年来のつき合いである。この長い間に折登さんは同じ業務ソフト業界で転職をした。今日の味方は明日の敵方となるわけだ。折登さんを敵に回すのは嫌だろうな、と思う。物怖じしない語り、眼鏡の奥からにらみつけるかのような目線。それに語気が強い。話していると本当に怖い人がいるものだと、思うことしばしばであった。それがどういうわけか、私とともにBCNの創業期から経営をともにした同志で当時専務取締役だった故吉若徹(ワカ)さんとは実にウマがあって、6年前にワカは臨終の場に折登さんを指名している。


 ワカの旅立ちの話は『千人回峰』の対談を終えてからじっくり聞くことができた。折登さんの目は大きい。話し始めて間もなく、大きな水滴がまぶたから“溢れ出て”きた。しみじみワカはすばらしい仲間をもっていたと思った。少し間があって折登さんから便りをもらった。

 「吉若さんとは、今でも"戦友"のような思いです。彼はメディアサイドから、私はアプリケーションサイドから、これからのIT業界の方向性を呑みながら語り明かしていました」。二人が酒を酌み交わす図を思うにつけ、きっと周囲に迷惑をかけたのではないかと想像する。

 いつの間にか折登さんは業務ソフト業界の最古参の営業担当役員である。誰もが一目を置く存在である。業界の明日を牽引し続けてほしい。

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