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2017/03/13 09:03

インタビュー

[週刊BCN 2017年03月06日付 Vol.1668 掲載]

コミュニケーションを大切にして家族的経営を守り続ける(下)
メッツソフトウェア 代表取締役会長 野口アキラ

 25年ほど前、「ぱぴろじすと」の会で初めてお会いした野口さんの印象は、「ずいぶん面倒見のいい人だなあ」というものだった。そして今回、お話をうかがっていると、とても人と人のつながりを大切にされる方だと感じた。高専卒業生の会である「ヒューマンネットワーク高専」の事務局長を務めたり、駅前清掃や青少年育成事業などの地域活動に積極的に貢献しているのもその表われのように思える。やはり、四半世紀前の第一印象に間違いはなかった。(本紙主幹・奥田喜久男  構成・小林茂樹  写真・長谷川博一)

2016.12.28/東京・渋谷区のメッツソフトウェアにて


心に響く人生の匠たち

 「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。

株式会社BCN 会長 奥田喜久男

<1000分の第179回(下)>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。

「ぱぴろじすと」との出会い

奥田 今年(2016年)4月、野口さんからお誘いいただいたヴァル研究所での「ぱぴろじすと」の設立25周年の会はとてもアットホームな雰囲気でした。野口さんご自身の姿勢にも通じるところがあるようにも思います。

野口 そうかもしれません。ぱぴろじすとに対しては、思い入れのようなものがありますね。

奥田 統合型開発ツール「ファラオ」そして「ナイル」のユーザーが自発的に集まったといわれるぱぴろじすとですが、出会いはいつでしたか。

野口 1990年です。渋谷法人会でヴァル研究所の創業者である島村隆雄さんと会ったのがきっかけです。印象に残っているのは、一緒にクルマでゴルフに行ったときに、2人だけでいろいろと話したことですね。「なんでもつくれるソフトがあるんだ。ぜひ、一回見においで」とおっしゃったんです。それがファラオのことだったのですが、当初は「そんなソフトがあるはずないだろう」と思っていました。ところが、実際に見に行ったら「いままでのものとはちょっと違う」。

奥田 それで、ファラオを使うことになったのですか。

野口 使ってみましたが、ファラオではソフトを一つつくっただけなのでそれほどの実感はありませんでした。でも、その後継のナイルはすばらしかったですね。自分のなかではDosナイル(ナイル)とWindowsナイル(ナイル for Windows)に分けているのですが、ことにDosナイルはよかった。

奥田 どんなところが?

野口 島村さんのいう通り、本当になんでもできることですね。それは実感しました。それとDosナイルでつくること自体がおもしろいんです。「妙」なんですね。

奥田 「妙」なのは、技術屋として?

野口 どうでしょうか。Dosナイルでは技術屋でなくてもソフトを簡単につくることができます。たぶん、Macがおもしろいといっている人たちと同じ感覚ですね。

奥田 Dosナイルで、お客さんは増えましたか。

野口 Dosナイルでずいぶんいろいろなパッケージをつくって販売しました。91年から93年頃のことです。

奥田 例えば、どんなパッケージですか。

野口 成績処理、入試管理、公開模擬試験、社内預金、会員管理、販売管理などのシステムですね。それから、ちょっと変わったところでは動物病院システムというものもつくりました。類似のソフトがそれほどなかったこともあり、かなり売れました。

奥田 会社が伸びた時期には、請け負いの仕事だけでなく、ナイルを使ったパッケージづくりに仕事の範囲が広がっていったということですね。

野口 イージーオーダーという形で、パッケージの基本にカスタマイズを少し加えて販売していました。

奥田 お客さんとの接点は?

野口 ホームページです。アクセスしてくるのはエンドユーザーが多いですね。つまり動物病院システムも、動物病院の方がダイレクトに問い合わせてくるのです。インターネットですから、全国から問い合わせがきます。こうしたエンドユーザーからの問い合わせは、成約率が高いですね。

奥田 そのスキームは生きているのですか。

野口 今もそういうパターンですね。

奥田 ホームページをお客さんが見て、問い合わせ、発注し、納期はいつまでと決めて納品する。操作方法や手順は、どのように伝えるのですか。

野口 どんな地方でも、必ず納品に行くようにしています。納品時には操作手順を教え、手順書も渡しますが、イージーオーダーなので、まず最初に必ず打ち合わせに行きます。それを持ち帰ってカスタマイズし、でき上がったら納品に行ってテストし、何か問題があれば再度訪問します。ですから、おおむね3回はお客さんのところに行くような形ですね。

四半世紀を超えてなお生き続けるシステム

奥田 DosナイルもWindowsナイルも、ずっと更新されていませんね。

野口 Windowsナイルの最終バージョンは、2001年5月現在のものですね。DosナイルはWindowsナイルが出てきたときですから1995年です。

奥田 にもかかわらず、それ以降も、ぱぴろじすとの研修会が、ほぼ定期的に開催されてきたというのはすごいことですね。

野口 コンピュータに直接関係のない参加者がいることも、ぱぴろじすとの特徴です。パン屋さん、電器屋さん、税理士さん、材木屋さんなど、Dosナイルで自家用システムをつくってしまうわけです。そしてコンピュータ関係の人は、個人で地元の中小企業のシステムをサポートしていることが多い。これが、ぱぴろじすとの底力ですね。

奥田 まだ、Dosナイルのシステムを使い続けている企業があると聞きましたが……。

野口 先日、Dosナイルのシステムのつくり替えを依頼してきた企業がありましたが、これがかなり大きな会社でした。システムの規模でいえば、60人月ぐらいです。その会社の技術者が、25年間、ずっとDosナイルのメンテナンスをし続けていたんですね。ところが、その方が70歳になりリタイアするため、システムの面倒をみることができず、いよいよつくり替えないといけないという話でした。

奥田 そういうケースでは何に置き換えるのですか。

野口 Microsoft Accessです。

奥田 まだ、こうしたお客さんはおられますか。

野口 当社はヴァル研究所の販売代理店になっているので、ホームページを見て電話をかけてくるDosナイルのお客さんがいらっしゃいますね。そして、置き換えるのではなく、いまだにそのまま動かしているというお客さんもまだおられますね。

奥田 開発者の島村さんが97年に若くして亡くなり、Dosナイルのサポートをしている技術者が定年退職になっても、Dosナイルは生き続けているということですね。これも「妙」。すぐれたものづくりの普遍性をそこに感じます。

こぼれ話

 あまり冗談を言う人ではない。「会社を大きくすることは考えていないんですよ」と真顔で話される。驚いてこちらも真顔で、「本当ですか、なぜ?」と聞くうちに、これは年月をかけて練り上げた野口さんの経営哲学だと頷いた。それはこうだ。


 まずは新卒の採用を基本としている。創業当時に、コンピュータの専門学校で教壇に立っていたことがあるぐらい教えることが苦にならない。本人曰く。「中途半端な技術をもっている人より、もっていない人の方が教えやすい」。頷ける。二つめは、社員を増やした時もあったが、一人ひとりとじっくり話すことができなくなった。社員に意見を聞いた結果、「増やさないでほしい」という声が多く、野口さんが一人ひとりと"じっくり"話すことができる規模になった。

 「じっくり話す」というのは、喫茶店に入って向かい合って真剣に話すのだという。「話すうちに、その人の意外な一面に気がついたりして、お互いの信頼関係が深まる」。喫茶店のじっくり面談の効用話が続いて、「家内ともじっくり話す時には喫茶店に行きます。最近では家内からの誘いもあります」と真顔。一人との会話を1日2時間さいて、一月で20人との対話。野口経営に考えさせられることが多い。

 全国の高等専門学校の卒業生のネットワークであるヒューマンネットワーク高専の事務局長、ぱぴろじすとの会の世話役。野球好きから社名はメッツ。野球チームの監督的な感覚で野口さんを捉えると、実に納得できる。


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