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2012/06/07 09:29

インタビュー

[週刊BCN 2012年06月04日付 Vol.1434 掲載]

市場環境は変わっても ものづくりの考え方は変わらない
インターコム 代表取締役 高橋 啓介

 まもなく創業30周年の節目を迎えるインターコム。創業経営者として高橋社長と私はほぼ「同期の桜」だが、残念ながら、当時創業したソフトメーカーの多くはすでにマーケットから姿を消した。そんななか、元気を保ち続けてきた同社の過去から現在にスポットを当てるとともに、今後の展開、そして高橋さん自身の本音に迫った。改めて感じたのは、やはり高橋さんは経営者でありながら、「ものづくりの人」であり続けているということだった。(本紙主幹・奥田喜久男/構成・小林 茂樹)

Profile

高橋 啓介(たかはし けいすけ)
1947(昭和22)年、千葉県生まれ。商事会社を経て、72年、オートメーション・システム・リサーチ(略称ASR)設立に参画、NHKの選挙速報システムの開発で通信ソフトの基本技術を習得。82年、インターコムを設立、代表取締役社長に就任。97年、情報化促進貢献で「通商産業大臣賞」を受賞。BCN AWARD通信ソフト部門12年連続最優秀賞受賞。2010年より、スタンダード&プアーズ(S&P)日本SME格付けの最上位「aaa」を2年連続で取得。今年6月、同社は創立30周年を迎える。

2012.4.4/東京・台東区のインターコム本社にて

レガシーと最新のタブレットの融合

奥田 最近は、どんな製品をリリースしておられますか。

高橋 先日、「FALCON 5250 for iPad」というiPad対応の端末エミュレータを英語バージョンで出しました。IBMのAS/400というオフコンがありますが、それを遠隔操作するソフトです。

 日本語版を先行してリリースしていましたが、海外からのダウンロードが1か月で1000件近くもありました。そこで急遽、英語バージョンをつくってみたというわけです。

奥田 ほかでは、あまり見かけない製品ですね。

高橋 日本で初めてです。でも、かなり前から構想は練っていました。用途としては、例えば生保レディーが訪問先でホストコンピュータから有用な資料を取り出して顧客への提案に使うとか、物流倉庫の中でBluetooth対応のハンディターミナルと連携し、棚卸しや検品を行うといったことを想定しています。

 すごく古いレガシーと、一番新しいiPadを組み合わせたわけです。ユーザーの皆さんも「これ、珍しいね」とおっしゃいます。

奥田 アンドロイド版も出すのですか。

高橋 いや、それはまだです。まずiOSで試してみてからアンドロイド対応を考えます。当社はこれまでさまざまな大型コンピュータ用のエミュレータをつくっています。今回、iPadという新しい製品と組み合わせることで、新たな需要を掘り起こしたいと考えています。

創業30周年を迎える経営者としての想い

奥田 ところで、今年は創立30周年ですね。おめでとうございます。

高橋 ありがとうございます。6月8日で満30年になります。

奥田 創業時には、どんな志をもって方向性を決められたのでしょうか。

高橋 前にいた会社(オートメーション・システム・リサーチ)は、どちらかというとハード指向の会社でした。もともと私はソフト指向だったのですが、ハードの値段が劇的に下がったのを目の当たりにして、やはりハードは厳しいという思いを抱いたことを鮮烈に覚えています。

 以前にもお話ししましたが(「千人回峰 人ありて我あり」2007年10月9日掲載)、1980年代の初頭にビジネスショウで見た沖電気パソコンのif-800の値段は、同じ機能のミニコンの約10分の1になっていて、非常に驚きました。そうした価格変動の落差を目の当たりにして、これからはミニコンではなくパソコンだと思ったわけです。

奥田 そして創業後の30年間を総括して、どんな想いを抱いておられますか。

高橋 ものづくりの考え方はほとんど変わりません。でも、市場環境は大きく変貌しました。

 昔は、ソフトをつくってそれを売ればいいと単純に思っていましたが、ハードばかりでなくソフトの値段もこれだけ下がってしまうと、単純に売るだけでは商売になりません。創業の頃に5万円したパソコン用のソフトが、今は5000円です。iPadなどのアプリなら500円です。ですから、クラウドを通じて永続的に売っていくというやり方も併用しなければならない。

 当社のビジネスの三本柱は、クラウドによってソフトを貸し出すサービス、昔と同じようにソフトを売るサービス、そして売った後の保守サービスです。保守サービスについては、ビジネス向けのものはすべてその対象になっています。一回売ってそれで終わりにしないための仕組みですね。

奥田 その3種類の売上構成は?

高橋 まだオンプレミス(買取り・自社運用)が70%ほどで圧倒的に多く、サポートが20%くらい、残りがクラウドです。収益率はクラウドのほうがいいのですが、絶対額がまだ小さい。だから、オンプレミスとクラウドの両方をうまく組み合わせてやっていかないと、収益を上げるのは難しいですね。

 将来的には、オンプレミスのほとんどをクラウドサービスに置き換えていくと思います。ただし、私どもの場合、保守サポートはついてくるけれども、会計ソフトのように税率変更などによるバージョンアップで儲けることはできないので、そこのところを自分で考えていかなければなりません。いずれにせよクラウドビジネスの比重を高めなければ、企業基盤を強化することができないと思います。

奥田 ビジネス向けとコンシューマ向けのシェアは、どのくらいですか。

高橋 ビジネス向け95%、コンシューマ向け5%くらいです。コンシューマ向けは、卸値や返品条件が厳しく、価格も安いので、収益を上げることが難しい。だからコンシューマだけやっていたら、たぶんアウトでした。ただ、ソフトづくりとしては、コンシューマ向けのほうが業務系よりも面白いですよ。

 業務ソフトはやることが決まっていますが、われわれのソフトはまったく何もないところから考えていく。オリジナルの自分のアイデアをその製品に生かせるわけです。映画のエンドロールで、どんなに小さな仕事をした人でも自分の名前が出てくるのはうれしいじゃないですか。それと同じで、われわれのソフトづくりには「参加している」という面白さがあると思います。もちろん、面白いことをやりながら収益を上げていくというのは大変なことですが……。

奥田 この先の30年は、高橋さんにとってどんなイメージですか。

高橋 全然わからないですね。新年度のスピーチでも、私は会社の基礎をつくったから、あとは皆さんで考えて、という感じでした(笑)。

 宿題として残っているのは、もう一度IPO(株式公開)に挑戦するかどうかですね。準備はかなりしてあります。コンプライアンスの問題もクリアしていますし、業績もまあまあで内部的に問題はありません。あとは成長力があるということを打ち出せるかどうかだけなんです。

奥田 商品企画の神様といわれていたんだから、お得意でしょう。

高橋 いや、BCNさんが力を入れておられる「中国ビジネス」のような盛り上がりがないといけません。奥田さんは中国に肩入れしすぎているともみえますが、でもそのくらい凝らないとダメですね。私どもソフトウェアの世界で成長が期待できるとすれば、それはソーシャルネットワークです。それをベースにビジネス向けアプリの製品開発をするのがいいと考えています。例えば、人材採用に使われる「LinkedIn」のような感じです。

奥田 明るい展望が開けているわけですよね。

高橋 でも、私も64歳ですからもう引退ですよ。あくまで、希望ですがね……。

奥田 それは私も同感ですね。ただ、BCNは昨年、一足先に30周年を迎えましたが、この大きな節目までよくやれたなという充実感を味わうことができました。

高橋 会社の30年間生存率は、わずか0.2%ですからね。私は素晴らしい人たちに恵まれて非常にラッキーだったし、この30年は楽しかった。でも、そういうふうに思うこと自体が、歳をとったということなんでしょうね。

奥田 お互い、どのタイミングで引退するかを虎視眈々と狙っている。ほんと、いつまで(社長を)やるんでしょうね(笑)。

・愛用のサックス


高橋社長の趣味は、サックス演奏だ。対談終了後に、YouTubeにアップされた「ウエディングソング」をiPadで鑑賞し、拍手喝采。お嬢さんの結婚披露宴で演奏するためにマスターしたそうだ。


・インタビューこぼれ話


 高橋さんと私は同じ頃に創業し、以来、長いおつき合いをしている。内輪を褒めるのはどうかとは思うが、この対談は実に要領を得て、うまくまとまっている。というのも、対談の現場では鎧を脱いだ経営者が企業経営を後進にどう委ねるのか、といった活字にしにくい内容が大半を占めたからだ。(奥田)

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