ページの先頭です。

2013/03/21 09:24

インタビュー

[週刊BCN 2013年03月18日付 Vol.1473 掲載]

「ものづくりの環」【特別編】 「BCN ITジュニア賞」受賞校の先生方に聞く特別座談会(下)
「誰かに喜んでもらいたい」を大事にする

 日本を元気にしたい。そのためには若い力の台頭が欠かせません。日本からビル・ゲイツを、スティーブ・ジョブズを育ててほしい。その情熱のほとばしりに接したいと願って企画したITジュニア賞受賞校の先生方による特別座談会、その後編をお届けします。
司会・進行/BCN社長(ITジュニア育成交流協会ファウンダー)奥田喜久男
構成/谷口 一
撮影/大星 直輝
【2013.1.18/東京・内神田のBCNオフィスにて】

特別座談会(上)「技術・知識よりも『取り組む姿勢』を教える」から読む

【前列左から】坂田俊哉先生(室蘭工業高等高校)、平子英樹先生(宮城県工業高等学校)、鵜野澤博先生(千葉商業高等学校)
【後列左から】真木明理事(ITジュニア育成交流協会)、長尾和彦先生(弓削商船高等専門学校)、田辺誠先生(宇部工業高等専門学校)、金澤啓三先生(香川高等専門学校 詫間キャンパス)、高橋文男理事長(ITジュニア育成交流協会)、奥田喜久男社長(BCN)


「味噌汁をつくれるようになる!」が目標

奥田 優秀な子どもたちというのは、よき指導者のもとで育つのだなということを実感しています。金澤先生のお話を聞いていて、溢れんばかりの情熱をもっておられるのを感じました。平子先生も、情熱家とうかがっています。

平子(宮城県工高) 私は金澤先生と違って、たいへん恥ずかしいんですが、結構、叱ります。その代わり、いいときはとことんほめます。メリハリが大事だと思っています。ただ、技術とかそういうことで、できないから怒ったり、失敗したのを怒るということは、絶対にしないようにしています。手を抜いたり、いい加減なことをしたり、人との約束を守らなかったりとかしたときは、徹底的に怒ります。

宮城県工業高等学校
情報技術科教諭
平子 英樹 氏


【実績】U-20プログラミングコンテスト団体部門で経済産業大臣賞を受賞

奥田 長尾先生のところは子どもたちとの接し方は、どんな感じでしょうか。

長尾(弓削商船高専) 指導者側としての私の目標は、学生にプロコンに参加してもらうことです。参加学生に、一人ずつ目標を掲げさせるんです。そのなかで、おもしろい目標を掲げた子がおりました。うちの学校は島(弓削島)にあって、コンビニもありませんし、ファミレスでミーティングとかもできません。

奥田 へえ、そうなんですか。コンビニもない。

長尾 ええ、夏休みの期間には学食もなくなりますので、全員で自炊します。それで食生活をちゃんとして、そのうえでプログラムをつくろう、という状況になります。合宿がイヤなら、夏休みの間に活動しなくていいように、スケジュールを組めばいいのですが、学生は頭を下げて「合宿させてください」と言ってくる。自炊ではタマネギのむき方とか、基本的なことから教えなければいけません。

弓削商船高等専門学校
情報工学科教授
長尾 和彦 氏


【実績】第23回全国高等専門学校プログラミングコンテスト課題部門で最優秀賞を受賞

 そんな状況ですので、合宿の目標に「味噌汁をつくれるようになりたい」と言った子がいました。ほかの子は、プログラムをつくれるようになりたいとか、プロコンでいい成績をとりたいとか言うんです。大会後の反省会のときに、その子が「家で味噌汁をつくってあげて、お母さんに喜ばれました」と……。その言葉を聞いたときに、成績はともかく、私の指導は成功だったなと思いました。逆に、一等賞になりたいという学生は、ちょっと要注意です。勝ち負けにこだわると、もしも勝てなかったとき、何も得られなかったように感じてしまいます。

奥田 長尾先生は、以前からそういった考えをもっておられたのですか。

長尾 そうです、ずっと前からですね。教師側がいくらやれと言っても、学生は動きません。そこに何か得るものがあるとか、おもしろいと感じなければ本気になってくれません。だから、自分の目標を掲げることを指示します。

「ずっとそばにいる」というスタンス

奥田 自主性というのを長尾先生は大切にしておられるようですね。

長尾 ずっとそばにいるようにしてます。自分で考えろと言いつつ、わからなかったら叫べと言っています。考えてわからなかったら、聞きなさい。誰にでもいいからと。

奥田 指導の仕方は、先生それぞれの型があるのだなあと感じております。部の増員を考えておられる坂田先生は、これからどんな指導方法をとられるのでしょうか。

坂田(室蘭工高) うちは情報技術科ですので、1年生から丸2年をかけてプログラミングを教えて、3年目に卒業制作みたいなかたちで、ゲームづくりをやるんです。1年間かけてつくったゲームは、卒業前に発表会を開いて後輩たちの前で披露します。そのゲームをつくっている時が一番伸びるんですね。みんなをあっと言わせるものをつくってみたいって。

北海道室蘭工業高等学校
情報技術科教諭
坂田 俊哉 氏


【実績】第33回全国高校生プログラミングコンテスト競技課題の優勝者を輩出

 指導の時に気をつけているのは、いきなり高いハードルを与えるとあきらめてしまうので、少しずつ難易度を上げていくことです。その点に苦心します。毎年、生徒によって課題を変えて、最後のゲーム製作をするときも、サンプルになるプログラムをたくさん準備して、あとは自分の力で調べて考える、というスタンスでやっています。つい教えたくなるんですけど、ちょっとヒントを与えるという感じで、自分でやらせるように仕向けています。

奥田 指導の仕方とか子どもへの接し方とかは、年々変わるのですか。

坂田 その生徒の状況をみて、課題を調整しながら接し方を考えます。一度やる気がなくなると、モチベーションを上げるのが大変になるので、モチベーションを維持しながらやっていくにはどうしたらいいかと、常に考えています。

奥田 取り組む姿勢は情熱をもって教育するけれど、技術は自主性にまかせ、モチベーションが落ちないようにフォローする。お話を聞いていて、日本が強くなっていくのは、やっぱり“人づくり”なのかなと強く思いました。

可能性に目を閉ざす者は、水中で泳ぐことをやめた者に等しい

奥田 座談会の締めくくりとして、先生方が大切にしておられる言葉を一言ずつ、おうかがいできればと思います。

金澤 そうですね。本気で取り組まないと栄誉はない。そういう気持ちで接していきたいと思います。

香川高等専門学校
詫間キャンパス
情報工学科准教授
金澤 啓三 氏


【実績】第23回全国高等専門学校プログラミングコンテスト自由部門で最優秀賞を受賞

田辺(宇部工業高専) 私は問題解決力をつけさせるためにやっていますが、きつく叱ったり、厳しいことを言ったりするほど、自分に降りかかってきますから、自分がある程度のレベルをキープしないと、学生にもなかなか指導できないという考えもありまして、もっと自分を律していければと思っています。

宇部工業高等専門学校
制御情報工学科准教授
田辺 誠 氏


【実績】第23回全国高等専門学校プログラミングコンテスト競技部門で優勝

長尾 自戒の念を込めて、「可能性に目を閉ざす者は、水中で泳ぐことをやめた者に等しい」という言葉を、モットーにしています。やらないと始まらない、まずやってみよう、できるできないはやらないとわからないから、ということです。

鵜野澤(千葉商高) 勤務先は商業高校で、私も商業の教員です。商業というのは、ものをつくるということはしません。人をつくるんです。企業や社会にさまざまな形で貢献できる人財育成です。財産となる人を育てます。買い手の立場になって物事を考えられる人間。システム開発であれば、ユーザーの立場に立って開発ができるということが一番重要ですので、相手のことを想像して考えて動ける人間というのが、部活動の目標でもあります。これをモットーに頑張っていこうと思っています。

千葉県立千葉商業高等学校情報システム科教諭
鵜野澤 博 氏


【実績】U-20プログラミングコンテスト団体部門で経済産業大臣賞を受賞

平子 私の指導のスタンスはできるかぎり教えないで、生徒の自主性に任せて、そばによりそいながら、失敗をさせて、考えさせながら教えていくというやり方です。みなさんと共通しているのは情熱をもって真摯に取り組んでいることだと思います。だから生徒たちも、少しずつ力がついてきているんじゃないかなと思っています。

坂田 生徒のモチベーションが一番高まるのは、人に認められたいと思っている時だというのを改めて感じました。そのためにも、やはりコンテストは勝負事なんで、勝ちにこだわってやらせたいと思っています。勝ちたいと思ってやっていれば、負けて悔しいとか、いろんな気持ちが出てくるので、そこからまた新しいやる気が生まれてくるんじゃないかと思います。今日はいろいろ勉強させていただきました。今後の指導に役立てていきたいと思います。

奥田 先生方には貴重なお話を披露していただき、ありがとうございました。何か光明がみえた気がいたします。

■おすすめの関連記事




PR

週刊BCN購読のお申し込みはこちら

Bizline会員サービス(無料)のご案内 新規会員登録はこちら

 

PR










ITジュニアの広場

「ITセミナー・イベント」コーナーで注目商品・サービスなどのセミナーを一挙公開!

過去の掲載記事一覧

ITビジネス情報紙「週刊BCN」

ITビジネス情報誌「週刊BCN」
2016年05月23日付 vol.1629
ICTが導く教育の現在と未来 大手ITベンダーのビジネスからみる

2016年05月23日付 vol.1629 ICTが導く教育の現在と未来 大手ITベンダーのビジネスからみる

「週刊BCN」購読お申し込み
BCN Bizline ITを売るパートナービジネスの創造を

「BCN Bizline」は、株式会社BCNが保有する登録商標です。(商標登録番号第5388735号)