ページの先頭です。

2013/08/22 09:27

インタビュー

[週刊BCN 2013年08月12日付 Vol.1493 掲載]

もうPC周辺機器メーカーとは呼ばれたくない
ロジクール 代表取締役社長 アジアパシフィック&ジャパン地域 コーポレートビジネス最高責任者 竹田芳浩

 「マウスはロジクールのものしか使わない」と公言する人たちが私の周りにもいる。そのブランド力は世界が認めるところだ。ロジクールの親会社Logitech Internationalは1981年に創業、スイスに本社がある。日本法人ロジクールは1988年に創業、今年が25周年になる。PCとともに歩んできた企業だ。そのPCがスマートデバイスの登場で急速にシェアを奪われようとしている。緻密なものづくりで勝ち抜いてきた企業は、今後どう舵を切っていくのか。ものづくりにかける思いと進む方向を竹田芳浩社長に聞いた。(本紙主幹・奥田喜久男  構成・谷口 一  写真・清水タケシ)

Profile

竹田 芳浩(たけだ よしひろ)
 1968年1月、東京生まれ。91年、立命館大学法学部卒業。トーメン(現豊田通商)で世界各国の海外営業を担当した後、セイコーエプソンに入社。エプソン・インディアを設立し、社長に就任。その後、日本ヒューレット・パッカード に転じてコンシューマ&ウェブソリューション統括本部長などを歴任。2010年4月、ロジクール代表取締役社長に就任。09年3月、東京理科大学大学院で技術経営修士(MOT)取得。

2013.7.11 東京都港区のロジクール本社にて

創業者のものづくり精神は日本企業とジョブズから学んだ

奥田 ロジクールは、PC周辺機器で「BCN AWARD」受賞の常連ですし、根強いファンの方も多数おられます。世界的に非常に強いブランド力をおもちです。まずは、その製品づくり、ものづくりに対しての根本のところからお聞かせいただけますか。

竹田 ロジクールの親会社であるLogitech Internationalの創業者の一人はスイス人のダニエル・ボレルですが、彼はもともとエンジニアだったということもあって、ものづくり日本への思い入れが非常に強いのです。というよりも、日本があったから彼は商売ができたのです。彼はスイスのレマン湖のほとりにあるローザンヌ工科大学を卒業して、その後、アメリカのスタンフォード大学に留学しまして、その時に、リコー向けのソフトウェアの開発で商売を始めたのです。

奥田 1981年のことですね。リコーのどんな商品だったのですか。 

竹田 グラフィカルエディターだと言っていました。その時はまだ会社を設立していなくて、でも、その商売がうまくいきそうなので会社をつくったのです。その取引が彼の出発点なので、日本のものづくりの厳しさというものを、よく理解していると思います。その後、Logitech がワールドワイドに展開する転機になったのが、アップル向けのOEMのマウスの商売です。その時にダニエル・ボレルは、スティーブ・ジョブズと直接、いろいろと交渉したらしいのですが、非常に要求が厳しい。ジョブズの言う技術的な要求を通すには、オムロンのあるスイッチを入れないとうまく作動しないというので、ボレルは日本に来て、オムロンの工場まで行って直接交渉をし、そのスイッチを買い付けたのです。ですから、本当に日本のものづくりのよさというのを、ボレルは理解していまして、それを今もLogitechグループは生かしていると思います。そのへんが根本にあると思います。

奥田 今のお話は日本人にとってはとても響きのいい話なのですが、現状のものづくりのトップベンダーをみてみると、ひどいものですね。経営の内容、シェアにしても。創業が1981年ですと30年以上前ですね。その頃は日本のものづくりはよかったけれど、当時の力が今もあるのでしょうか。下がっているという印象を受けるのですが……。

竹田 日本のものづくりの力は、残念ながら下がっていると思います。ITだけではなく、いろんな業界で、白物家電もそうですけれど、価格競争が非常に厳しくなっていますので、手を抜くという言い方は不適切ですけれど、手をかけないでつくれるような部品でできるものをつくっているという印象を受けます。コード番号にCRとついているものがいろんな会社の製品に見られます。これは、コスト・リダクション(原価低減)の略です。だから可能なものはコストリダクションして製品をつくる。そういうものづくりが幅を利かせているのではないでしょうか。

奥田 今はコストダウンとスピードアップが、製造業の合言葉になっていますが、品質はブランドの信頼を培いますので、大切です。

軸足をワールドワイドで動かして新たなものをつくる

奥田 さて、PCからスマートデバイスに急速に移行している現在、どう舵を切られるのか、そのあたりのお話を聞かせてください。

竹田 ご承知のとおり、PC周辺機器のマウス、キーボード、ウェブカメラというのが当社の事業の柱になっているのですが、われわれは今、軸足をワールドワイドで動かそうとしていまして、もうPC周辺機器メーカーと呼ばれたくないと思っています。

奥田 そうですか。大きな舵切りだと思いますが、具体的にはどう動いておられますか。

竹田 以前、ミュージック系の製品をつくっているUltimate Ears(アルティメット イヤーズ:UE)というブランドを買収しました。そこはヴァン・ヘイレンというアメリカのハードロックバンドにおられた技術系のディレクターの方が個人でつくった会社なのですが、アメリカでかなりシェアをもっているすばらしい製品を出しています。われわれも日本で展開していたのですが、そのラインアップをかなり増やしました。まずそういった音楽系のものに力を入れていきたいと思っています。また、PCよりもタブレットやスマートフォンが世の中で必要とされていますので、──もちろん、PCのマウス、キーボード、ウェブカメラを軽視するわけではありませんが──スマートデバイスで使えるような、キーボードなどにも力を注いでいきたい。あとゲーマー向けですね。インターネット上でやるゲーム用のマウス、キーボードは結構ハードに使う人が多いのですが、うちの製品はみなさんに高い評価を得ているので、ゲーマー向けのものも力を入れていきたいと思っています。その三つに注力します。

奥田 既存のPC周辺機器プラス三つの柱を拡大していくということですね。

竹田 そうです。さらにもう一つはBtoBです。オフィスで使われるような商売があまりうまくできていない実情があって、そこに向けた製品を順次出していきます。今までのイメージからかなり軸足を動かしながら、新たなものをつくっていこうとしているところです。

奥田 BtoBは今、全体の何%ぐらいですか。

竹田 日本でも世界でもまだ数%です。ただ、OEMビジネスもあり、東芝や富士通のマウスとかキーボードは弊社が入れているものですが、それをBtoBと捉えると、パーセンテージはもっと上がります。その伝統的なものを除くと、今はまだ本当に少ない数字です。逆にいえば、伸びしろがあると捉えていますが……。

奥田 では、全体の売り上げに占める今のシェアと将来のシェアはどうお考えでしょうか。

竹田 構成比ですね。現状はPC系のものが8割以上だと思います。今後もマウス、キーボード、ウェブカメラも伸ばしていきながら売り上げ全体の円を大きくしようと思っています。そのなかで音楽系のものは今よりも5倍、6倍くらいにはしたいですね。スマートデバイス向けも確実に伸ばしていく。ゲーマー向けのものも、すでに高いシェアをとっていますが、この市場はまだまだ伸びますので、年間30%くらいの成長は続けていきたいです。全体の売り上げを伸ばしながら、新しい三つの柱の構成比を伸ばしていこうと考えています。

・オベロイホテルの刻印がある名刺入れ


 かつてインド駐在の折に長期宿泊した「オベロイホテル」から記念にもらったもの。インドでのさまざまな思い出とともに懐かしい品だ。今も大切に使っている。


・こぼれ話


 ゲームでもスポーツでも、勝負に強い人は、得意技と運をもっている。竹田さんの得意技はインド勤務の時代に培われたようだ。広大なインドでシェアを獲得するにはどうしたらいいのか。予算は限られている。地域を絞り、その地区でトップシェアを獲るという戦術に出た。この策が的中して、大成功を収める。「人脈は今も生きていますよ」。竹田さんの話は、スポーツの勝利者インタビューのようで、耳に心地よかった。

■おすすめの関連記事




PR

週刊BCN購読のお申し込みはこちら

Bizline会員サービス(無料)のご案内 新規会員登録はこちら

 

PR










ITジュニアの広場

「ITセミナー・イベント」コーナーで注目商品・サービスなどのセミナーを一挙公開!

過去の掲載記事一覧

ITビジネス情報紙「週刊BCN」

ITビジネス情報誌「週刊BCN」
2016年05月23日付 vol.1629
ICTが導く教育の現在と未来 大手ITベンダーのビジネスからみる

2016年05月23日付 vol.1629 ICTが導く教育の現在と未来 大手ITベンダーのビジネスからみる

「週刊BCN」購読お申し込み
BCN Bizline ITを売るパートナービジネスの創造を

「BCN Bizline」は、株式会社BCNが保有する登録商標です。(商標登録番号第5388735号)