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2011/05/19 09:28

[週刊BCN 2011年05月16日付 Vol.1382 掲載]

ニュース

<中国市場のキーパーソンを取材>日立の「JP1」、海外でも存在感を示す

 国内運用管理ソフト市場でトップシェアを堅持している日立製作所の「JP1」。そのターゲットは国内だけでなく、国内No.1のブランドと品質の高さを武器に、世界に打って出ている。成長著しい巨大マーケットである中国には、2003年に本格進出。名の知れた大手のIT企業であっても市場開拓が難しい中国で、日立のソフトウェア事業部はどんな戦略を推進してきたのか。ソフトウェア事業部の中国戦略のカギを握る複数のキーパーソンと、現地のパートナー企業の幹部に話を聞いた。

The first key person 森保治 総経理
「JP1」を売り続けて9年
現地のソフト事業を支える

日立信息系統(上海)有限公司の森保治・軟件事業部総経理。02年に中国に渡って以来、一貫して中国でビジネスを手がける
 日立製作所が中国市場で運用管理ソフト「JP1」を本格的に販売し始めたのは、今から9年前の2003年。00年にアジア市場に進出を果たすなかで、巨大な国土と膨大な人口を抱える中国の急成長を予測し、03年10月に上海に事務所を設置したことが、「JP1」の中国進出の始まりだった。

 その当時から現在に至るまで、9年間にわたって中国で「JP1」の拡販活動を取り仕切っているのが、日立信息系統(上海)有限公司の森保治・軟件事業部総経理である。森総経理は「02年から03年にかけては中国で『SARS(重症急性呼吸器症候群)』が発生して大騒ぎとなった。出鼻をくじかれた感じだった(苦笑)」と、その当時の状況を語ってくれた。

 森総経理が最初に手がけた仕事は、認知度の向上とブランドの確立だったという。「80年代に日立は中国でテレビの広告を大量に露出していて、当時でも日立といえばテレビの印象が強かった。法人向けのソフトウェアメーカーとしての顔はまったく知られていなかった」そうだ。『運用管理ソフト』は市場も確立されておらず、必要性を理解してもらうのにも時間がかかり、「最初は本当に苦労した」と振り返る。

 およそ半年間、広告・宣伝活動に集中し、並行して現地でのエンジニアの育成と、サポート体制の整備に力を注いで、ビジネス基盤を整えたという。「JP1」のサポート拠点は今、中国で3都市、合計約50人のスタッフを抱える。「ここまで手厚いサポート体制を敷いている競合メーカーはいないはず。ソフトの機能や品質だけでなく、(手厚くて親切なサポートが)強みになっている」と、森総経理は築き上げたサポート体制の質の高さを自負している。

 「JP1」の中国でのパートナー数は約50社に到達した。そのほとんどが、日本の中国法人ではなく、中国資本の現地企業だという。森総経理は「中国での運用管理ツールの市場はまだまだこれからで、伸びしろは大きい。中国IT企業との協業強化、マーケットを広げるための普及・啓発活動を通じて、これまで以上に存在感を示したい」と意気込みをみせている。

The second key person 田辺史朗 総経理
先進技術を世界に広げる
研究・開発会社のリーダー

日立の中央研究所出身で07年から現職に就いている田辺史朗総経理
 日立の中国における「頭脳」といえるのが、2005年に設立した研究・開発会社の日立(中国)研究開発有限公司だ。複数の有名大学が集まる北京市と上海市に拠点を構え、約100人のスタッフを抱える。スタッフのうち、調査研究員は約70人で、平均年齢は28歳。そのうち、「JP1」などの情報システム関連のスタッフが40人ほどいるという。清華大学など、有力大学との連携にも積極的で、情報ソフトのほか、社会インフラ、医療など、さまざまな次世代技術の研究・開発を推進している。その研究開発会社のトップは、日立の中央研究所に長く在籍し、07年から総経理を務める田辺史朗氏だ。

 田辺総経理は、「日本の研究所と同じことをやっていても意味がない。中国特有の文化やニーズを汲み取った製品を生み出せるようにすることが重要」と、基本的な考え方を示している。そのうえで、「中国で受け入れられる製品には何が必要かを導き出すための支援を行う。将来は、われわれが研究・開発した製品を、中国のみならず全世界に届けられるようにしたい」と製品開発における中・長期的な方向性を語っている。

 田辺氏は、現在約100人のスタッフを12年度に150人、15年度には現在の2倍にあたる200人に増やす計画をもっている。注力しているのは、「JP1」など情報システム関連のほか、次世代の社会インフラシステムを構築する技術研究だという。「スマートシティを実現するための応用技術にはかなりの力を注ぐつもり。スマートシティの構築には、電力制御などITの新技術が必要な部分が多い。情報と社会インフラ技術をもつ日立の競争力に直結する」(田辺総経理)。

 中国の人件費は年々上昇傾向で、「大卒の初任給は年率10%程度伸びている」という。スタッフの離職率は日本よりも高いらしいが、「中国には優秀な人材が多くいるので、その研究力、開発力を活用して、中国から世界に提供できる製品の技術をつくり上げたい」というのが、田辺総経理の構想である。

The third key person 李立群 課長
日本と中国の橋渡し役
飛躍のカギを握るホープ

李立群課長。日本で採用されて08年に中国に戻った
 森総経理は、中国でのビジネスについては経営幹部も中国人を採用して、現地化を図る考えを示している。中国で成功するには、「中国の商慣習や文化を知る中国人に任せたほうがいい」(森総経理)という考えからだ。そのなかで、重要な役割を果たしている一人が、若手のホープである李立群・軟件事業部市場部企画課課長だ。

 李氏は、情報通信分野で有名な北京郵電大学を2000年に卒業後、最新技術を学ぶために留学制度を利用して日本に渡り、京都大学に入学した。その後、日立製作所に入社し、ソフトウェア事業部でグローバルビジネスを推進する専門部隊に配属される。そこで、主に海外のユーザー企業のサポート業務を手がけ、「JP1」に関する知識を蓄えた。また、日立の海外事業の展開手法もここで学んでいる。08年に中国に戻り、今は上海拠点で課長職を務める。

 現在は、「JP1」を拡販するための市場調査やマーケティング活動を主に手がけている。

 「JP1」を市場に浸透させるために必要な協業計画の立案や、パートナー企業のリクルート、協業交渉なども李課長のミッションになっている。昨年に戦略提携した中国最大手のLinuxディストリビュータであるレッドフラグとの協業交渉にも深く関与している。

 「目標としては、2015年に2010年の実績に比べて事業規模を数倍増やしたい」と李課長は考えている。「日立本社の文化を学び、中国市場を知っているのは自分の強みだと思っている。日中の橋渡し役になり、『JP1』を広く普及させることに力を尽くしていきたい」と説明し、日立の中国でのソフト事業をけん引する役割を果たそうとしている。

戦略パートナーLinux 最大手のレッドフラグ
担当者が日立との協業の狙いを語る
カーネル・チェン プロダクト&マーケティングバイスディレクター


 日立と中国最大手のLinuxディストリビュータである北京中科紅旗軟件技術有限公司(Red Flag Software Co.,Ltd、以下レッドフラグと略す)は、2010年10月にシステムの運用管理分野で戦略提携している。レッドフラグや日本のミラクル・リナックスなどが共同開発するLinux「Asianux」の運用管理プラットフォーム「RedFlag Enterprise Manager(RFEM)」を共同開発することで合意した。今回の協業の陣頭指揮を執ったのが、レッドフラグのカーネル・チェン プロダクト&マーケティングバイスディレクターである。

 レッドフラグは、中国のLinuxでトップシェアを誇るLinuxディストリビュータだ。サーバー向けとクライアント端末向け、ともにLinux市場でNo.1のポジションを築き、クライアント向けLinuxでは世界トップを誇る。中国は日本よりもLinuxを活用したシステム開発や利用に関心が強く、Linuxディストリビュータの地位は日本よりも高い。そのなかで、レッドフラグは不動のNo.1のポジションを堅持している。07年には、韓国のハーンソフトと日本のミラクル・リナックスと協力してLinuxを共同開発する新会社アジアナックスの設立の陣頭指揮を執った企業でもある。

北京市内のレッドフラグ本社
 昨年に設立10周年を迎えたレッドフラグは、中期戦略として、OSだけでなくクラウドコンピューティングに必要なプラットフォーム関連製品の開発に力を注いでいる。そのなかで、システム運用管理分野は重要な強化ポイントになっている。

 チェン バイスディレクターは、運用管理分野で日立と協業することを決めた理由についてこう語っている。「他のIT企業と協業することも当然ながら考えた。協業先は複数の企業を検討した。そのなかで、日立の世界的な知名度と実績、そしてレッドフラグが定める品質基準を満たしていることが大きなポイントになった」と語る。

 彼はまた、日立との協業範囲をさらに広げたいという考えをもっている。「運用管理だけでなく、日立製品の品質や高い技術力にはすごく興味をもっている。仮想化やセキュリティなど、今後関係をより強化したいと思っている」(チェン バイスディレクター)と強調している。

 レッドフラグとの提携で、日立の運用管理分野での地名度とブランド力が高まったことは間違いない。協業範囲が広がれば、日立の事業拡大に大きく貢献することは間違いない。

レッドフラグ本社でチェン バイスディレクターと日立の森総経理が握手

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