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2012/09/14 14:43

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ARGの先駆者 慶應義塾大学の武山政直教授に「ゲーミフィケーション」を聞く、キーワードは価値共創

 昨年から、急速に関心が高まりつつあるゲーミフィケーション。今年6月には、ゲーミフィケーションをテーマにした大規模イベント「ゲーミフィケーションカンファレンス2012」が都内で開催された。イベントのアドバイザリーボードメンバーであり、近年、ARG(代替現実ゲーム)を用いた参加型プロモーションを産学共同で推進している慶應義塾大学経済学部の武山政直教授に、ゲーミフィケーションの最新動向を聞いた。

聞き手●信澤健太

慶應義塾大学経済学部の武山政直教授

──先生は都市メディア論や消費者行動の分析がご専門ですが、ゲーム研究の分野との関わりはどこから生まれたのでしょうか。

武山 企業と消費者が協力して価値をつくる価値共創プラットフォームをどのように構築していくかに関心をもって、集合知について研究しています。エンタテインメントの仕かけを有効に使えないかと模索するなかで、ARGを知りました。これまでゲームの世界と生活の世界は区分されてきましたが、オーバーラップさせて価値共創をしようとARGを実践してきました。そうしたら、別の角度からゲーミフィケーションというキーワードが登場した。異なる点はありますが、共通する点もあるので注目しています。

──なぜ、ARGに注目されたのですか。

武山 もともと、ゲームというフレームワークが現実世界を捉える、変える、人を動かすのに有効ではないかという意識を漠然ともっていました。具体的な手法がなくて興味の域を出ていませんでしたが、ARGのようなものが登場してきたので実践し始めたという経緯があります。

 ARGの特徴に、物語性があります。つまり「ごっこ遊び」だと思うんですよ。子どもはごっこ遊びをしますが、大人になるとしない。でも、ごっこ遊びを通じて、新しいことに気づいたり現実の捉え方を変えたりできるはずです。制作者がつくった物語を一方的に語るのではなく、物語の世界に参加者が入っていって、一緒に進行していくことが価値共創にもつながってきます。オーディエンスではなく、プレーヤーとして物語に入る設定が非常に面白い。

──どのような事例がありますか。

武山 大学内のクローズドな環境で何度か試した後に、企業と共同でビジネスを意識した最初のトライアルとして、坂本竜馬をテーマにしたARGを実施しました。それが「RYOMA the Secret Story」です。ある歴史学者が、坂本竜馬の謎の暗殺事件が現代の登場人物につながっていたという秘密を暴こうとしますが、口封じのために孫娘が誘拐されてしまいます。参加者は、インターネットや秋葉原のカフェにばらまかれたヒントをもとに、協力して助け出すという内容でした。

──今、取り組まれているプロジェクトは。

武山 企業との共同研究ですのであまり公にはできませんが、ネットワーク化された家電や自動車の操作が複雑化して、わけがわからなくなるという状態を避けるために、インターフェースにゲーム的なエージェントを導入する試みをしています。システムと人が、ゲーム的な世界観のなかで、うまくコミュニケーションを取ることができるようにします。

 例えば冷蔵庫の食材管理の際に、食材のモンスターが登場して、「これとこれを組み合わせるとこういう料理ができる」とか。ゲーム的な仕かけを入れることで、栄養価の高い料理を作るとポイントが上がる、あるいはモンスターが成長するというようなことができる。ゲーミフィケーションを活用すれば、複雑化するシステムと人とが、フレンドリーに対話できるようになるのではないでしょうか。

──どのような分野に、ゲーミフィケーションを活用できる可能性がありますか。

武山 マーケティングはもちろん、人材教育やリハビリなど、適用できない領域はないんじゃないでしょうか。無限の可能性があると思います。ただ、ゲームと親和性のある領域とそうでない領域という先入観があると思うので、すぐには飛びつきにくい分野もあるでしょう。

 企業のマネジメントに導入するのはハードルが高くて、企業内で共通理解がないと難しいでしょう。また、人材教育や企業内のコミュニケーションにどういうゲーミフィケーションがよいのかは、まだわかっていない。企業にもよりますが、ある種のルーティンワークを真面目にやっていけるようにするのか、新しいアイデアをグループで出し合ってイノベーションを支援するのか、それぞれの目的によって、つくり込みが全然違ってきます。

 残念ながら、目標が明確にない、新しいものをつくり出していくときのゲーミフィケーションは、よくわかっていません。仕かけをどうつくるのかが、これからの課題です。今のゲーミフィケーションは、目標が明確に定まっていて、そこに到達しやすくさせるための仕組みが中心です。

 プラスアルファや組み合わせになるのかもしれませんが、今、主流のフレームワークだけでは、目標がないところに向かうストーリー展開はたぶん難しいと思います。場合によってはゲーム以外の演劇やアートなど、人間の感性を揺さぶってくるようなものとコラボレーションすると、いろいろな広がりが出てくるのではないでしょうか。

──ありがとうございました。

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