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2011/06/27 11:20

連載

<クラウドアプリ界の異端 ブランドダイアログ~その“キセキ”を追う>第1章 なぜ「Knowledge Suite」が選ばれるのか?

 国内のグループウェア市場が絶頂期を迎えていた2009年2月。「クラウド型」と銘打ったブランドダイアログ(稲葉雄一社長兼CEO)の企業向けグループウェア「GRIDY(グリッディ)」が産声を上げた。当時のグループウェア市場は、IBMの「Lotus/Notes」やマイクロソフトの「Exchange Server」、国産ではサイボウズの「サイボウズ Office」やネオジャパンの「desknet's(デスクネッツ)」など、大手メーカーがしのぎを削る修羅場。筆者を含め、IT業界関係者の誰しもが「無謀な参入」と傍観していた。ところがこの“新参者”は、わずか1年半で忽然と頭角を現す。BCNは、“クラウド業界の異端児”といわれるブランドダイアログの稲葉社長に、長時間のインタビューを敢行。6回の連載で、その「奇蹟=奇跡(キセキ)」とビジネスモデルを丸裸にしていく。

ブランドダイアログの稲葉雄一社長兼CEO

無謀な賭だったはずが大ブレーク

 ブランドダイアログの「GRIDY」は、クライアント/サーバー(C/S)型でイニシャル(初期導入費)を得る手法やSaaS(ASP)型のユーザー課金する一般的なグループウェアとは、根本的にビジネスモデルが異なる。パソコンで使われていないCPUやハードディスクドライブ(HDD)の「遊休能力」を借り受ける代わりに、対価として中小企業向けグループウェアを提供するというモデルなのだ。稲葉社長は、このビジネスモデルを「新たなイノベーション(革新)」と言ってはばからない。「GRIDY」のビジネスモデルを端的に形容すると、「グリッドコンピューティング(グリッド)とフリーミアムが融合したモデル」とも受け取れる。しかし、後述するが、厳密にはフリーミアムではない。それでも、初版のリリース当時、「フリーミアム」の流行とともに、このビジネスモデルが注目の的となったのは事実だ。

独自のグリッド技術がグループウェアの世界を変えた

 「GRIDY」のエンジンといえる独自の技術「プロモーショナルグリッド(登録商標出願中)」は、外部のパソコンやサーバーのCPU/HDD資源を高度なセキュア環境でネットワーク化するもの。無料で「GRIDY」を利用する対価として、ユーザーのインターネット接続環境やパソコン/サーバーの「遊休能力」を借り受け、その資源を独自のミドルウェア「GRIDY Client」を通じてネットワーク化することで「仮想コンピュータ」をつくり上げる。取扱説明書には、そう記されている。

 無料版利用者から借り受けた仮想化によるコンピューティング資源は、SaaS型で提供している有料版の営業支援SFA/顧客管理CRMを実装し、2010年1月に発売した「Knowledge Suite」のインフラとして活用している。これによって利用コストを削減でき、有料版の料金を格安にすることができたのだ。発売当時、このモデルは、「フリーミアムモデルのBtoB版」ともてはやされた。だが、稲葉社長はこれを否定する。それもそのはず、「無料で利用している企業に対してアップセルし、有料版に移行させることで収益を得ることはしていない」(稲葉社長)だけでなく、無料版から有料版へ移行するユーザーが少ないからだ。当時は月間1000社の問い合わせが続き、今現在でも月間500社からの問い合わせが続いているというのも「Knowledge Suite」が支持されている理由の指標になる。

中小企業のパソコン「遊休能力」活用で「グループウェア」が浮上

 ブランドダイアログの設立は06年1月。クラウド型グループウェア「GRIDY」を出すまでに、3年のブランクがある。実は当初、このグリッド技術で得た「遊休能力」を使った“場所貸し”で収益を得ることをもくろんでいた。実験として、複数の案件で試みている。例えば、個人向けパソコンから「遊休能力」を得る目的で、かつてのアニメーション会社GDH(当時の社名はゴンゾ・ディジメーション・ホールディング)が動画のエンコードを高速化することなど、スーパーコンピュータ的な利用を試している。ただ、「個人向けパソコンは電源オンの時間が短いだけでなく、幅広く安定的に資源を得ることが難しい」(稲葉社長)ことがわかってきた。そこで、中小企業で利用するパソコンから資源を得ることへ方向転換を図る過程で、グループウェア構想が浮上したというわけだ。

 企業からグリッド用の資源を得るなら大企業を相手にしたほうがよさそうだが、「中小企業向け」に焦点を絞った理由を稲葉社長はこう説明する。「大企業はクライアント数が多く、一気に資源を確保できる。ただ、契約が途切れた時にパフォーマンスがガクンと落ちる。しかも、当社のベンチマークでは、中小企業のパソコンのほうが、大企業より長い時間稼働している」。また、中小企業の遊休能力を沢山集めることでディザスタリカバリー対策にも寄与する。「遊休能力」を得る方法を練りに練った結果、当時のIT市場で、最も勢いのあったグループウェアで、中小企業の資源を一気呵成に獲得しようとしたのだ。

 「GRIDY」がサービスインした頃、巷ではコスト削減を実現する新たな概念として「SaaS」や「クラウドコンピューティング」に関心が集まっていた。「Amazon EC2」や「Google」、「Salesforce.com」などのパブリッククラウドが注目されてきた恩恵もあり、「GRIDY」は正式リリースからわずか2か月で1,000社が導入。9か月目には5,000社が導入するという快挙を達成した。Facebookの初期を彷彿とさせるほど、勢いはとどまることを知らなかった。10年1月には、有料版の営業支援SFA/顧客管理CRM「Knowledge Suite」を発売したが、これもわずか1年半で800社が導入し、「GRIDY」発売から2年にして、ブランドダイアログは無料・有料で累計1万社の顧客を抱えるまで成長した。

「Knowledge Suite」のラインアップ

1GBあたり2000円/月という価格破壊を実現、有料版の商談が加速

 稲葉社長は、「日本のSaaSはASPの成り代わり。SaaSのもつ『いつでも、どこでも、利用した分の利用料だけ支払う』という”コスト還元”の恩恵を、利用者側が享受できていない」という信念をもっている。ブランドダイアログのホームページにも、しっかりこの理念が刻まれている。つまり、他のSaaS型やASP型のサービスは、ユーザー1人あたりに課金するモデルが主流で、稲葉社長が定義づけるクラウド本来の概念である「利用したい時に利用した分だけ対価を払う仕組み」とは異なっている。そこで、「Knowledge Suite」は、蓄積するデータ1GBあたり月額2000円で利用できるようにした。IT業界のなかでは“価格破壊の象徴”だ。

 「Knowledge Suite」は、グループウェアやSFA/CRM、オフィスソフト、集計・分析(BI)といった複数の製品群が一つになり、それぞれのアプリケーションと機能同士が連携した統合アプリケーション。製品群には多彩なモジュールが揃っており、これらを一元的に使うことができる。たとえば、製品群のなかにある「GRIDY リードフォーム」の機能では、簡単に問い合わせフォームを作成で「GRIDY SFA」側に自動で取り込み、見込み度合いに応じて戦略的にコミュニケーションをとることができ、これによって商談化や受注を加速する。

「Knowledge Suite」のモジュール「GRIDY リードフォーム」

 800社の「Knowledge Suite」導入は、ブランドダイアログの営業担当者、わずか4人が全国に直販して獲得した数字だ。全社員でも30人ほどのベンチャー企業が、どれほどの技術力とサービスをつくり上げているのか、次回からは、その勢いの源を詳細に探ることにしよう。(谷畑良胤)

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