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2009/09/07 11:00

連載

[週刊BCN 2009年08月24日付 Vol.1297 掲載]

アイルランドは世界一のソフトウェア輸出国?
サイバー大学 IT総合学部教授 前川 徹

 先月、ある委員会で「アイルランドはソフトウェア輸出で世界一だ」という話を聞いた。世界一のソフトウェア大国は米国だと思っていたので、非常に驚いた。そこで事実を確かめるべく、インターネットで検索すると、「アイルライドは世界一のソフトウェア輸出国である」とか、「アイルランドは世界最大のソフトウェア製品輸出国となっている」というようなコンテンツが多数見つかった。この中には、政府(内閣府)の報告書も含まれている。

 この意外な事実(?)の出典は、OECDの「ITアウトルック2002」である。ちなみに、最新版の「ITアウトルック2008」によれば、アイルランドのソフトウェア製品の輸出額は1996年から減少傾向にあるものの、2006年時点でもOECD加盟国中、ドイツ、米国に次いで第3位にランクインしている。たぶん、1990年代後半から2000年までOECDの統計では、アイルランドは世界一のソフトウェア製品輸出国だったのだろう。


 しかし、アイルランドのソフトウェア製品の輸出額は2006年で20億ドルである。第1位のドイツですら33億ドルしかない。この数字は明らかに変だ。世界一のソフトウェア企業であるマイクロソフトは、2006会計年度(期末は2006年6月30日)に海外市場から146億ドルの売り上げを得ている。オラクルやアドビの海外市場における売り上げも考えれば、完全に一ケタ小さい。


 この数字の違いの原因はすぐに判明した。OECDの統計が、CD-ROMやDVD-ROMなどの媒体に記録されたソフトウェア取引だけを対象としているからである。パッケージソフトの多くは、それぞれの地域で「ゴールドマスター」と呼ばれる原盤からコピーされる。この原盤からコピーされたソフトウェアの取引は、OECDの統計には含まれていない。また、企業などが大量に同一パッケージソフトを導入する場合は、まとめてライセンス契約を行うため、この統計には含まれないし、パソコンやサーバーにプレインストールされたソフトウェアも対象外だ。さらに、海外のサイトからダウンロードされるソフトウェアや、国境を越えて利用されるSaaSについても考慮されていない。


 本件から学んだことは二つある。一つは、統計を利用する場合は、その定義を確かめないと誤解を生む情報を発信してしまうこと。そしてもう一つは、ソフトウェアの貿易額を把握するのはとても困難だということである。


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