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2011/11/24 09:09

連載

[週刊BCN 2011年11月21日付 Vol.1408 掲載]

電子版新聞が抱える課題
サイバー大学 IT総合学部教授 前川 徹

略歴

三重県出身、1978年 通商産業省入省、通産省機械情報産業局情報政策企画室長、JETRO NewYorkセンター産業用電子機器部長、IPAセキュリティセンター所長、早稲田大学客員教授などを経て、2007年4月から現職、コンピュータソフトウェア協会専務理事などを兼任。
 米国では電子書籍の市場が急拡大している。おそらく日本でも2~3年で、ブックリーダーの利用者が急増するだろう。では、新聞はどうなるだろう。新聞社は紙媒体から電子版にビジネスモデルを切り替えていけるだろうか。

 そういう私自身は1年ほど前から日経新聞の電子版の有料会員である。紙媒体の購読をやめて、スマートフォンやパソコンで新聞を読んでいる。国内はもちろん海外でもインターネットにつなげば新聞が読めるのは便利だし、読み終えた新聞を片付ける必要がない点もよい。

 日本経済新聞社は、8月3日、電子版の登録会員数が100万人に達したと発表した。ただし、この数には無料会員が含まれており、有料会員は14万人にすぎない。この14万人には紙媒体も購読している人が含まれるので、純粋な電子版購読者はそれほど多くないと想像される。日経新聞の販売部数は約300万部なので、まだ純粋な電子版の有料購読者の割合は極めて小さい。

 問題は、購読料にあるように思える。電子版の単独購読料は月額4000円で、紙媒体の購読料よりも383円しか安くない。これは紙媒体の購読者減少を恐れた価格設定としか思えない。いわゆるカニバリズムを恐れているのだろう。まるで10年ほど前の音楽配信サービスのようだ。音楽CD市場への影響を恐れて、国内レーベルは新曲のダウンロードサービス価格を1曲350円ほどに設定し、著作権管理技術(DRM)を用いて厳しいコピー制限を行った。

 ちなみに日本経済新聞社も電子版の利用者に厳格な著作権管理を求めている。紙媒体であれば職場で回し読みをしても問題はないし、銀行や病院の待合いやホテルのロビー、図書館などに置いておいて不特定多数の閲覧に供することが許されている。しかし、電子版を企業が購読する場合、その利用者一人につき月額4000円の購読料を支払わなければならない。100人の会社なら月額40万円になってしまう。銀行や病院の待合いスペースや図書館などに電子版を閲覧できるパソコンを設置する場合には、電子版(パブリック)の契約が必要で、最低3ID分、つまり毎月1万2000円以上かかる。つまりは、紙媒体の購読を続けてほしいと新聞社が願っているようにしか思えない。

 もし、本気で電子版にビジネスを切り替えていくつもりであるならば、電子版の価格を少なくとも紙媒体の半分にして、利用制限をもっと緩和すべきである。

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