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2012/07/05 09:09

連載

[週刊BCN 2012年07月02日付 Vol.1438 掲載]

電子政府の失敗を繰り返さないために
サイバー大学 IT総合学部教授 前川 徹

略歴

三重県出身、1978年 通商産業省入省、通産省機械情報産業局情報政策企画室長、JETRO NewYorkセンター産業用電子機器部長、IPAセキュリティセンター所長、早稲田大学客員教授などを経て、2007年4月から現職、コンピュータソフトウェア協会専務理事などを兼任。
 政府は、2000年7月に「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」を設置し、翌年7月に「e-Japan戦略」を発表して、世界最先端のIT国家を目指すことを表明した。それから10年余り、世界最先端の通信インフラは整備されたものの、その利用は思うように進んでいない。とくに、医療、教育、政府・自治体の各分野の情報化は、依然として多くの課題を残している。例えば、国連が発表する電子政府ランキングを見ると、日本は2003年と04年の18位から05年には14位、08年には11位とランクを上げたものの、10年は17位になり、12年には18位と元の位置に戻ってしまっている。

 IT戦略本部は、評価のための委員会を設けて、施策の進捗状況を把握し、残された課題を整理し、何をすべきかを議論している。一応、PDCAのサイクルは実行されているようにみえる。しかし、10年も経つのに効率的で利便性の高い電子政府が構築できていないのは何故か。

 30年ほど前に出版された『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』という本がある。1991年には中公文庫から再刊され、この分野のロングセラーになっているのだが、内容は、ノモンハン事件から沖縄戦までの六つの戦いを通して、旧日本軍の組織面からみた敗戦の本質的な原因を究明している。

 現在の政府の組織を旧日本軍とまったく同じだというつもりはないが、電子政府・電子自治体構築における「失敗の本質」を明確にしてそれを改善しない限り、同じような失敗が続くのではないだろうか。政府が設置した評価のための委員会は、目標の達成度をチェックし、順調に進んでいるものとそうでないものを識別し、次の課題を明らかにしているのだが、うまくいっていないものについて、その根本的な原因を解明しようとはしていない。ユーザビリティの向上が必要だとか、業務プロセスの見直しをしてから情報化を進めるべきだとか、行政情報を行政組織間で共有して添付書類をなくすべきだとかいう議論はもっともだが、失敗の根本的な原因を明らかにしなければ、おそらく何度も失敗を繰り返すだろう。

 政府は、この10年の電子政府構築の失敗の本質的原因を、組織の文化や体質、意思決定のプロセス、減点主義の人事評価制度、硬直的な予算制度、システム開発の契約方式など、組織や制度そのものにまで遡って究明し、抜本的な改革を行うべきである。

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