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2013/03/21 09:10

連載

[週刊BCN 2013年03月18日付 Vol.1473 掲載]

地方の小さな成長戦略に見習おう
ソフトピアジャパン 理事長 熊坂賢次

略歴

熊坂 賢次(くまさか けんじ)
 1947年1月生まれ、東京都出身。69年早稲田大学政治経済学部卒業、79年慶應義塾大学院社会学研究科博士課程修了。90年慶應義塾大学環境情報学部助教授、現在、同学部教授。03年から岐阜県大垣市に本拠を置くソフトピアジャパンの理事長を兼務。
 岐阜には「FC岐阜」というサッカーチームがある。J2リーグに属して、そこそこ頑張っているけれども、まだ弱体の下位低迷チームだ。しかも財政問題で組織存亡の危機に立たされるなど、組織運営でもチームの戦績でも苦境の連続にある。このチームは、潜在的なファンをいかに獲得するかというアプローチをよく理解していないようだ。そこで、岐阜県の情報産業課が立ち上がった。国の緊急雇用対策を活用したアプリ開発人材100人構想のプロジェクトで、「FC岐阜」のファンとのつながりを発見してもらうツール「FC岐阜アプリ」を作成してリリースした。まだiPhone用だけだが、ダウンロードランキングで一気に上位につけるなど、好調ぶりを示している。

 「FC岐阜アプリ」は、大企業のスポンサーがつきにくい、中小都市に拠点を置くプロスポーツチームを支援する手法として、つまり多くの個人スポンサーを獲得する手法として、意外と貢献するかもしれない。しかもプロスポーツを媒介としたファンと選手とのつながりをきっかけに、既存の地域社会を越えたコミュニティづくりが実現するかもしれない。となれば、多くのファンとのつながりの連鎖に、財政問題も含めた組織の再生ばかりか、地元を見つめ直して新たな日常を発見する可能性があることさえも期待できよう。

 今、国政では、アベノミクスが滑り出し好調だが、誰もが理解しているように、鍵は成長戦略である。そこで国が切れるカードは規制緩和による既成勢力の交代と競争環境の創生であって、あくまでも制度枠のリセットにすぎない。とすれば、その前提のもとで、地方がどのような成長戦略を具体的に実行するかを示さない限り、日本の復活はあり得ない。「FC岐阜アプリ」の開発は、岐阜県が頑張って推進してきた、小さいけれども地道にかつ着実に成長促進を支援するための施策だ。このような公的な仕掛けは、新しい人材開発であり、それによる新しい雇用促進であり、同時に地域コミュニティの小さな変革をも誘発させる、という意味で十分に価値のある社会戦略である。

 地方の小さな成長戦略の価値を見逃してはならない。その成長戦略は、あらゆる生活分野で大量に実践することが肝心である。地方にも蔓延する既成勢力への依存体質から脱却し、チャレンジする世代を巻き込んで、そこに公的主体が協働的に参画することで新しい競争環境を創出すれば、新しい成長シナリオがみえるはずである。「FC岐阜アプリ」こそ、その小さな成長戦略である。

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