ページの先頭です。

2013/05/09 09:10

連載

[週刊BCN 2013年04月29日付 Vol.1479 掲載]

電子書籍に及び腰の出版社と業を煮やす経産省
新文化通信社 社長 丸島基和

略歴

丸島 基和(まるしま もとかず)
 1963年、東京都生まれ。85年、法政大学卒業。同年、ニッパン・ポニー入社。その後、取次会社日本出版販売に出向し、ビデオ・CDレンタルなどの複合書店の出店事業に携わる。89年、出版業界専門紙『新文化』を発行する新文化通信社に入社。広告部を経て『新文化』編集長を12年間務め、05年、社長に就任。
 電子書籍の時代といわれている。アップル、グーグル、アマゾンなど外資3社が出揃い、読書端末と電子ストアの闘いは激しさを増している。外資系ほか国内大手の書店、印刷会社、キャリア系企業が電子ストアを立ち上げた。その激戦模様の市場は、世界でも例がなく、電子書籍の売れ行きは、世界でもトップクラスといわれている。

 楽天の三木谷浩史社長は2020年までに5000億円の市場になると公言し、楽天はシェア50%を狙うと意気込む。実際はキンドルストアが群を抜いて独走態勢に入っているが、出版界は、電子書籍にいまだ懐疑的なところがある。出版業界におけるここに至るまでの経緯を少し紹介したい。

 出版社はこの数年、電子書籍という新たなビジネスを前に立ち尽くしていた。2010年にはすでに「電子書籍元年」と言われていたが、出版社が腰を据えてこの事業に取り組んだのは、つい最近のことである。

 当初、出版社を躊躇させていたハードルはいくつもあった。それは電子書籍が市場に出回ることで、全国の書店にどれほどの影響があるのかという問題だった。電子書籍事業が急成長することで、これまで紙の本を増売してくれた書店を裏切るわけにはいかない。ただでさえ、窮状に追い込まれている街の書店を、これ以上減らすことは、出版社の経営にとって死活問題である。情緒的なようで、出版ビジネスモデルの根幹的なものであった。

 そして価格の問題も大きかった。出版業界は定価販売が許されている再販制度に守られ、全国どの書店でも価格は同一。しかし、電子書籍はその範囲ではなく、電子ストアに価格決定権を委ねることになる。正確にいえば、ホールセラー契約などである程度はコントロールできるが、出版社にその決定権がないことについては、アレルギーがつきまとっていた。さらにはフォーマット、手間、労力、専属部署がない、著者の許諾が取れない──挙げればキリがないほど、「やりたくない言い訳」が出てきた。

 それらは、ほとんどの出版社が中小・零細企業であるからこそ、難しい問題であった。それに業を煮やしたのは経済産業省だった。10億円の予算を計上した「コンテンツ緊急電子化事業」を出版団体に委託し、コストと手間の問題を払拭させて約6万5000点の電子書籍を創出させた。現在、国内の電子書籍はおよそ35万点程度。それはまだ、全体の一部であり、本番はこれからである。

■おすすめの記事





PR

週刊BCN購読のお申し込みはこちら

Bizline会員サービス(無料)のご案内 新規会員登録はこちら

PR










ITジュニアの広場

「ITセミナー・イベント」コーナーで注目商品・サービスなどのセミナーを一挙公開!

過去の掲載記事一覧

ITビジネス情報紙「週刊BCN」

ITビジネス情報誌「週刊BCN」
2017年04月10日付 vol.1673
Survive or Die !? AI時代のIT業界 2017 今、知っておくべきAIとのつき合い方

2017年04月10日付 vol.1673 Survive or Die !? AI時代のIT業界 2017 今、知っておくべきAIとのつき合い方

「週刊BCN」購読お申し込み
BCN Bizline ITを売るパートナービジネスの創造を

「BCN Bizline」は、株式会社BCNが保有する登録商標です。(商標登録番号第5388735号)