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2010/09/01 12:28

連載

<定石を再考する~調査データの裏に見えるSMBの実態~>第4回 導入効果を語る前にまずユーザが抱える課題を訊き出そう(1/2)

プロフィール

岩上 由高(いわかみ ゆたか)
1971年、東京都生まれ。96年3月、早稲田大学大学院理工学研究科数理科学専攻修了。ジャストシステム、ソニーシステムデザイン(現ソニーグローバルソリューションズ)、フィードパスなどを経て、07年にノークリサーチ入社。シニアアナリストとして、IT産業の調査・研究、コンサルティングを手がける。主な著書に「クラウド大全」(日経BP社刊、共著)などがある。
 種々の経済指標では、景気は少しずつ回復しているという見方もある。だが、中堅・中小企業(SMB)にとっては依然厳しい環境であることに変わりはなく、IT投資についても更新需要主体の弱含みな回復といった状況だ。こうしたなか、ITを提案する側としては、ただ単に価格を引き下げればいいというわけにもいかない。以下のグラフは年商5億円以上500億円未満のSMBに対して、「業務システムの購入先に望む事柄」をたずねた結果である。

業務システムの購入先に望む事柄

 「製品やサービスの販売価格の引き下げ」や「保守/サポート料金の引き下げ」などの値段引き下げに関連する要望事項を抑え、「導入可否や導入妥当性を判断できる豊富な情報提供」が最も多く挙げられている。

 SMBにとって、IT活用の最も大きなリスクとは何だろうか。それは、「せっかく導入したのに、十分に使いこなすことができない」こと。IT導入を検討する際には、費用面や機能面ばかりに注目してしまいがちだ。「自社の現場スタッフやIT担当者でも扱うことができるか」「そのITを活用することで、本当に期待する効果を得られるのか」の検証が抜けてしまいやすい。

 その結果、せっかく導入したシステムが十分に活用されず、旧来の人手に頼る業務フローが併存する状況に陥ってしまう。こうした経験をもつSMBは少なくない。そのため、どんなに安価なソリューションであっても、自社での導入の可否や妥当性を確かめる必要があるという意識が働くのである。

 この傾向は、ユーザー企業の業績が厳しくなれば一層強くなる。図1は2009年8月に実施したアンケート調査結果だが、ユーザー企業の意識は「どんなに安くても、自社で容易に扱えて、期待した効果が得られるという確証がなければ導入しない」という状態であると考えておくべきだろう。

 ITソリューションを提供する側の視点に立つと、これは「投資対効果を明確に示す必要がある」ということを意味する。投資対効果の訴求方法はさまざまだ。例えば、

・ウェブ会議システムを導入することによって、年間の出張旅費費用を○×円削減できる
・社内情報共有の改善によって、社員一人あたりの年間残業時間を○×時間削減できる
・低消費電力型のPCに買い替えることで、年間の電力料金を○×円節減できる
 などが挙げられるだろう。

 投資しなかった場合のリスクを強調する方法もある。「1000人の個人情報が漏えいした場合、一人あたり○×円の補償がかかる」とか、「スパム対策を講じないと、不要メール削除に要する時間は時給換算で年間○×円」とか。

 「業績改善効果」「コスト削減効果」「想定される損害」といった指標を数値で表すと、説得力がだいぶ違ってくる。実際、ITベンダーからは投資対効果を見極めるための無償アセスメント、無料お試し期間の設定、ウェブサイトでの導入効果試算など、さまざまな施策が提供されている。これらの取り組みは有効であり、ユーザー企業もこうした支援策をもっと積極的に活用すべきだろう。

 ここまでは、よくいわれる「定石」の範囲内である。本連載のテーマは「定石を再考する」なので、当然ながらこれだけでは終わらない。ここからは、これらにまつわるSMBの意外な実態をご紹介することにしよう。

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