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2007/06/18 11:00

連載

[週刊BCN 2007年06月18日付 Vol.1191 掲載]

<IT業界のグランドデザインを問う SIerの憂鬱>第11回 受託開発系SIer152社の決算

 今年3月期に2006年度(06年4月-07年3月)の通期決算を発表した受託開発系SIerの株式公開企業152社の業績がまとまった。産業界の景気上昇を背景に、売上高は前年度比8%増となったものの、純利益は意外にも0.5%減少した。IT投資が回復し、「情報サービス業界は“空前の追い風”」(今年1月の賀詞交歓会で棚橋康郎・情報サービス産業協会会長挨拶)と評する向きもあったが、株式公開企業の決算集計を見る限り「その追い風は、どこに吹く風?」という結果となった。(佃均(ジャーナリスト)●取材/文)

“追い風”でも純利益は減少

■売上高は前年比8.2%増だが…

 今回の集計には、05年度は非連結だったのが連結に移行したり、再編や合併で事業構造が変わったケースなどを含んでいる。このため前年度と単純な比較はできず、前年度比の増減率や財務諸表セグメントの構成比などが変動する可能性を残している。その前提のうえで、直近の速報値をベースに受託開発系SIerの業績動向をおおまかに把握してみたい。

 受託開発系SIerのうち、今年3月末に06年度通期決算を迎えた株式公開152社の総売上高は、前年度比8.2%増の5兆7854億4800万円、総営業利益は23.3%増の3698億2500万円、経常利益は25.6%増の3648億9700万円だった。売上高が8%以上伸びたのはITバブルが始まった97年以来10年ぶり、営業・経常利益が20%以上伸びたのはバブル崩壊前の92年度以来15年ぶりとなる。

この好調さだと純利益も2ケタ台の大幅増となるのが常識的な予想だが、集計結果はあまりにも意外な結果だった。0.5%減の1668億3600万円。また売上原価、販売管理費はそれぞれ前年度比で6.6%、7.5%上昇した。いずれも売上高の伸びを下回っており、全般的に経費圧縮に向けた企業努力が継続されていることをうかがわせる。

■経営コスト削減に努力

 売上高に占める財務諸表セグメント別構成比は、営業利益率が6.4%、経常利益率が6.3%だった。05年度は営業利益率が5.6%、経常利益率が6.3%だったので、それぞれ着実に上昇している。これに対して純利益率は05年度の3.6%から0.7ポイント減少して2.9%となった。05年度は純利益率の漸減傾向に歯止めがかかったかにみえたが、06年度は再び後退してしまった。

 売上原価率は77.7%で05年度から1.2ポイント減少、販売管理費率は15.8%でこれも0.1ポイントの減少となった。売上原価と販管費を合算した企業経営コストは94.8%から1.3ポイント減って、93.5%に改善されている。前述のように、コスト圧縮・削減努力が成果をあげている。

 ちなみにICTサービス業として横並びに位置する販売系SIer(システム販売)やパッケージ系はどうかというと、販売系SIer(17社)は売上高が1.1%増で純利益は14.2%増、純利益率は0.3ポイント増の2.3%だった。情報処理機器やソフトウェア・プロダクトの価格低下を考慮に入れると、まずまずの健闘ぶりといっていい。またパッケージ系(22社)は売上高が10.8%増で純利益は2.1%減、純利益率は1.1ポイント減の8.2%となっている。

■構造上の問題が浮き彫りに

 受託開発系SIerは、売上高の伸び率が販売系SIerを大きく上回っているのに利益率が減少し、営業利益はパッケージ系の5.6%増の4倍も伸びているのに利益率は半分にも満たない。何よりも案件をこなすため、各社が人手の確保に奔走する“追い風”を受けていながら、増収減益基調から脱却できていない。これはもはや、構造上の問題があるとしかいえないのではあるまいか。

 詳細な分析はこれからだが、多くの受託開発系SIerが06年度内にいっせいに会計基準を変更したとか、不動産や有価証券の評価額減による特別損失を計上したとは思われない。すると残るのは、前年度から継続していた不採算案件の処理が、今年3月期決算を増収減益にした要因と考えざるを得ない。経常利益率が6%前後と低いので、不採算案件による特別損失が純利益を直撃する。

 業界各社は01年度以降、プロジェクト・マネジメント・オフィス(PMO)を設置したり、新規受注案件を絞り込むなど不採算プロジェクト撲滅の制度整備が進んでいる。業界トップ200社のほぼ7割が制度整備を終えたとみられるが、それが一向に実効をあげていないのだ。

■顕在化する地殻変動の予兆

photo 今年3月期の決算集計で目立ったのは、昨年3月期決算数値を修正した企業が少なくなかったこと。また気がつくのは、受託開発系SIerの上位企業(おおむね売上高1000億円超規模)と中位企業(同100-1000億円未満)の格差が広がっていることだ。

 売上高だけみると、今回のトピックは何といってもNTTデータの“1兆円超え”だが、対象をICTサービス全体に広げると純利益ではヤフー(売上高では12位)が579億6300万円で、NTTデータの506億3700万円を上回る。

 また、利益率ではオービックビジネスコンサルタントの31.3%を筆頭に、メッツ、ヤフー、ネットエイジグループ、オービック、ミクシィ、コーエー、プロシップといった新興企業が上位を占める。受託開発系SIerでは日本システムディベロップメント(NSD)の11.9%が最高で、全体の順位は27位だ。「情報サービス産業」の低迷、「ICTサービス産業」の台頭と言い換えることができる。

 さらにITアウトソーサー(登録型IT技術者派遣)が05年度に引き続いて2ケタの増収増益となっているのも見逃せない。その規模は売上高が9社で18.4%増の953億800万円、純利益は11.7%増の26億3200万円と小さいが、登録型派遣業全体を視野に入れると、決して侮ることはできない。受託開発系SIerを中核とする「情報サービス産業」に地殻変動が起こりつつある。すでにその予兆は顕在化しているのだ。

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