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2015/05/28 08:00

[週刊BCN 2015年05月25日付 Vol.1580 掲載]

Special Issue

<cloudpack>アイレット 代表取締役CEO 齋藤将平 5年前に見えた勝利の形 技術とスピードで出し抜いたクラウド市場

 ビジネスのインフラとしてパブリッククラウドを活用すること自体に懐疑的な見方も残っていた2010年4月、アイレットは「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」の導入をサポートするサービス「cloudpack」の提供を開始した。それから5年経った今、AWSの最上位パートナーに3年連続で選ばれ、ユーザー企業は500社を超えるなど、cloudpackは国内のクラウド市場において圧倒的な存在感を放っている。クラウドに社運を賭けたこの5年間、事業を率いる齋藤将平CEOは何を考え、次の5年でどこへ向かおうとしているのか。クラウド時代を勝ち抜く経営者の思想に迫った。

予算も採用も現場主義
スピード重視の技術者集団

──AWSで勝負すると決めて、cloudpackの提供を始めて5年。振り返ると、どんな5年でしたか。

齋藤 会社としては、いろいろな経験が蓄積されて、AWSに関してはどんな大企業にも勝てる運用・構築サービスを提供できるようになった、そんな5年間だったと思います。僕個人の感覚としては、すごくおもしろい5年間でしたね。

──クラウドを取り扱う仕事の、どこがおもしろいと感じられますか。

齋藤 業種を問わずクラウドというインフラが使われるようになったので、当社はお客様ごとに業界が全然違うんです。例えば、ゲーム業界と自動車業界では考え方がまったく違う。そんななかで、お客様それぞれのビジネスを理解して環境を構築し、運用・保守していくのがおもしろいですね。お客様が何を考えてビジネスをされているのか、そこが僕の一番興味あるところかもしれません。

──東京リージョンが存在しない時代からAWSを取り扱ってきて、ここまできた。「時代がようやく俺たちに追いついた」といったところですね。

齋藤 いやいや違います(笑)。僕らが、時代に追いつかないと。世の中では次々新しい技術やサービスが出てきているので、先見の明を鍛えていかないといけないと思っています。

──この5年で会社は急成長したわけですが、大きくなった組織の運営に関して悩みはありませんか。

齋藤 僕は経営者としてはこの会社が初めての経験なので、「急成長」といってもあまり実感はなく、12年前に会社を始めたときから考え方は変わっていません。ただ、現場への権限委譲は積極的に行っています。僕自身はここ2年くらいもう採用面接もしてません。全部現場が権限をもって、現場のリーダーが採りたい人を採り、給料も決める。僕は26歳のときに独立して会社を始めたわけですが、26歳の人って、みんな会社をやれる能力もいいアイデアも絶対もっていて、それが抑えつけられているだけだと思うんです。だから、僕の仕事は、人が能力を発揮できる場所と組織を、会社のなかにどんどんつくっていくということですね。

──新しい社員の方も増えたと思いますが、そのなかでcloudpackというビジネスについてはどういうビジョンを共有されているのでしょうか。

齋藤 当社がご提供できる最高の価値は、一つが先ほど申し上げた「技術」、そしてもう一つが「スピード」だと考えており、この部分は社員にもよく話しているつもりです。お客様からは「本当にcloudpackさんはスピードが速いですね」「これほど短期間で構築してくれるとは思いませんでした」といった声をいただくことが多く、僕がいない現場でも、ちゃんとスピード感を出せているなと感じます。しかも、すごいシステムがどんどんつくれているので、正直感心しています(笑)。なので、組織面でも今のところ大きな心配はありません。

チャンスを逃さないために
技術の“棚”を整える

──技術者でもある齋藤さんから見て、インフラの構築とは、どのような仕事だと思いますか。

齋藤 今までもインフラ構築という職種自体はあったわけですが、さまざまな技術をフレキシブルに組み合わせられるAWSでは、インフラに関してやることが増えた、インフラの部分だけでも仕事の幅が増えたということですね。

 昔であれば自社に大量のサーバーをもっている会社だけで行われていた仕事が、クラウドの登場によって僕らのような規模の会社でも可能になった。昔は大きいシステムをつくりたくても物理的に無理だったのが、今は誰もが好きなサーバー環境を手に入れられる。「インフラをプログラムする」時代になったということでしょうか。僕らは、このような時代になるということを5年前にいち早く理解し、「勝負できる!」と思ったので、それをサービス化したということです。

──クラウドで勝負すると決めたときのようなチャンスは、どうしたらつかめるのでしょうか。

齋藤 先ほど申し上げた「技術」と「スピード」が重要なんです。新しい技術やサービスに常に目を光らせる。ただ技術の情報を集めるだけでなく、便利さやコストなどお客様が求める価値につながるかどうかを正しく見極める。そして、よい技術だと思ったら、単に「これいいよね、なんかやりたいよね」ではなく、すぐに採り入れて「やってみる」。このサイクルをずっと強く意識してきたから、今のcloudpackがあると考えています。だからスタッフには、技術の“棚”や“引き出し”を増やしておくようにいつも話しています。

──AWSがなかったら今の会社の姿はなかったと思うと、ぞっとしませんか。

齋藤 そうでもないんです。とにかく新しく、すぐれた技術を見つけて、よりよいシステムをつくっていくのが僕らの仕事なので、AWSがなくても、別の形で同じようなことが起こったのではないかと。ただ、以前から運用・保守という仕事はやっていましたが、AWSが登場したことで、そのやり方をしっかり見直すことができたというのはあると思います。どの技術を扱うかのこだわりはないのですが、お客様の求めるものを提供する、ニーズに応える、そのために一番使いやすいのは、現時点ではやはりAWSです。

経営方針は「人への投資」だけ

──クラウドそのもの以外に、この5年間に力を入れてきた分野はありますか。

齋藤 クラウドの便利さは一定の理解を得たと思いますが、一方で問題解決のためのしっかりした方法論が示されてこなかったのがセキュリティだと思います。僕ら自身がセキュリティに対する取り組みに力を入れていこうと考え、プライバシーマークやISMS認証に始まり、PCI DSS Level 1なんて普通は僕らのような会社では取らない認証も取得してきました。近々、SOC2報告書の受領もできる見込みです。

 このような取り組みは、cloudpackがこれ以上大きくなる前にしっかりやっておきたかった部分です。セキュリティをきちんと理解したうえでお客様のインフラを構築できるというだけでなく、クラウドを専門に扱う僕らのような会社でも、ビジネスのスピードを落とすことなくしっかりとした内部統制を行えるということを示したかったのです。

──ここまで、cloudpackの5年についてお聞きしましたが、これからの5年について、中期経営計画のようなものはないのでしょうか。

齋藤 これから先の5年がどうなるか、僕ら自身も想像できないですよ。だから、経営計画としてあるのは、とにかく人に投資することだけですね。ただ、パートナーシップづくりは今やっておかなければいけないことの一つだと考えています。最近では、プロジェクト全体を管理するSIerと組ませていただいて、僕らの得意分野である素早い構築や、クラウドに関しての技術的なノウハウの部分をお任せいただくという形も多いです。また、クラウドにはいろいろな技術やサービスがあって、それを組み合わせることで、より便利に、より安全になり、ビジネスのスピードも上げることができる。僕らの会社だけであらゆるシステムがカバーできるなんて考えていないので、パートナーとシナジー(相乗効果)を引き出して新しい価値を生み出し、提供できるものの幅を増やしていけたらいいなと。

──世界1万社以上のAWSパートナーのうち、最上位の「APNプレミアコンサルティングパートナー」に認定されたのは世界でも28社だけ。3年連続は日本初。国内のAWS市場は制覇したようなものですよね。次は世界制覇ですか。

齋藤 そんな大それたこと考えていません(笑)。だって、運用・保守自体、技術によってどんどん自動化しているんですよ。より人の手がかからない状態になっていく。そうなったら、今の僕らの商売は最終的には必要なくなります。もちろん、自動化すれば僕ら自身もコストを抑えられるし、お客様はサービスをより安く、かつ安全に扱えるようになるので、それはいいことです。

──クラウドの進化によってcloudpackが不要になるというのは大胆な予測ですが、そのとき齋藤さんのビジネスはどうなってしまうのでしょうか。

齋藤 そのときは、僕らがそれまでに得た運用・保守のノウハウのなかで、一番大切な部分を取り出してサービス化していくようなイメージでしょうか。この先5年で、運用・保守の仕事は相当変わっていくのではないかと思いますし、僕らも先手を打ってサービスや僕ら自身を変革していきます。もちろん、クラウドの市場はまだまだ大きくなると考えていますし、僕らとしても新しい価値が提供できると思います。


cloudpackの5年
2010年4月 cloudpackサービス提供開始
2011年1月 AWSソリューションプロバイダーに認定
2013年6月 APNプレミアコンサルティングパートナーに認定(日本初)
2013年7月 大阪オフィス開設
2013年3月 ISMS/ISO27001認証取得
2013年8月 PCI DSS Level 1 Service Provider認証取得
2014年8月 虎ノ門ヒルズに新オフィスを開設
2015年4月 「cloudpack Security White Paper」発表

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