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2015/05/28 08:02

[週刊BCN 2015年05月25日付 Vol.1580 掲載]

Special Issue

<cloudpack>ドコモとcloudpackが考えるクラウド時代のパートナーシップ AWS導入のノウハウを両社協業で展開

 NTTドコモが2月、同社の経験をベースとしたクラウド導入ノウハウ/ツール集「ドコモ・クラウドパッケージ」の販売を開始した。今ではクラウドビジネスで積極姿勢をみせているドコモだが、3年前、同社が最初にAWSを導入する際に、インフラ構築サービスとして利用したのがアイレットのcloudpackだった。以来、現在に至るまで両社は協業関係を深め、今回ドコモ・クラウドパッケージの提供ではcloudpackが販売パートナーとして参画する。大手通信キャリアと気鋭のクラウドサービス事業者はどのようにして出会い、クラウドの力を引き出すためのパートナーシップをつくり上げていったのだろうか。両社のコラボレーションを成功させたキーパーソンに話を聞いた。

社内では「まずは全否定」されたパブリッククラウド

──NTTドコモとしては、3年前から始まった対話エージェントサービス「しゃべってコンシェル」がAWSの初採用でした。AWS、そしてcloudpackの利用を検討するに至ったきっかけは何だったのでしょうか。

秋永 実は、2012年3月にしゃべってコンシェルを開始した直後は、AWSではなく他のパブリッククラウドを利用していましたが、トラフィックが急増しすぐにインフラを増強する必要に迫られたのです。ところが、そのとき利用していたクラウド事業者からは「数か月でそこまで増やすのは無理」といわれてしまいました。われわれが求めていたのはサーバー数百台という規模だったので、それに対応できる選択肢としてはAWSしかないという状態だったんです。ただ、「AWSでやるしかない」と決まっても、われわれはAWSを使ったことがない。それでアマゾンさんから、cloudpackという導入支援サービスを紹介してもらったのが始まりです。

アイレット
中川誠一
cloudpack 営業部長
中川 しゃべってコンシェルの仕様上、AWSに用意されているロードバランシング機能の「Elastic Load Balancing(ELB)」が利用できないことがわかり、当社からは別のロードバランサーをAWS上に乗せる提案と実装をさせていただきました。ちょうどその頃、テレビCMが始まったり、端末の新機種にしゃべってコンシェルがプリインストールされるようになってアクセスが急増したのですが、ちゃんと使えるサービスとして運営することに成功しました。短期間に大量のサーバーを用意しなければいけないというところで、AWSの特徴をうまく活かせる案件だったと思います。

──そもそも通信キャリアとしてのサービスを、パブリッククラウドという他社のインフラ上で動かすことについて、社内ではすんなり受け入れられたのでしょうか。

秋永 すんなりどころか、かなり議論があった……というか、まずは全否定ですよ。われわれは通信キャリアとして基盤を提供する会社です。当然、「なぜ自社の基盤を使わず、社外のサービスを使うのか」という話になりました。しかし、必要な数のサーバーを準備できていなかったのは事実で、最終的には「お客様の求めるスピードを充足できていないのだから、クラウドでやるしかない」と半ば説き伏せるようなかたちでした。

中川 ただ、ちょうどその頃、ドコモさんが中期戦略(2011年11月の「中期ビジョン2015-スマートライフの実現に向けて-」)で、通信キャリアから総合サービス企業への転換を目指すとの方針を打ち出されていました。それに合わせるかのように、しゃべってコンシェルの移行が成功した後、ドコモさん向けのAWSの提案は自然と増えていったと感じています。

秋永 現在ドコモでは「スマートライフのパートナー」という言葉を掲げていますが、サービス企業としてやっていくなら、サーバーを立てて、プログラムを書き、サービスを始めるまでに半年や1年といった時間をかけていては話にならないということに、社内でも気づいていたんです。で、実際にしゃべってコンシェルでAWSを使ってみたら、サービスレベルは社内でインフラを運用するのと変わらない。だったら、もっとこれを活用しようということになったんです。

ドコモの実体験でクラウドを後押ししたい

──クラウドの利用にあたって、社内ポリシーとの間で齟齬が発生するといったこともあったのではないでしょうか。

NTTドコモ
秋永和計
イノベーション統括部
企業連携担当
担当課長
秋永 オンプレミス、当社でいう「局舎」に設置するサーバーに対しては、情報セキュリティを含め、ルールや運用の仕方は明確に決まっていましたが、クラウドに構築するサービスについてどうするのかは、そもそもの議論からスタートする部分もありました。最初はお客様の個人情報を取り扱わないというのを前提にして、サービスそのものは匿名状態で行うことでOKが出ていました。しかしこのルールだと、せっかく新しいアイデアがあっても個人情報がクラウドに乗るからダメとなるケースも出てきました。

中川 より高いセキュリティが求められるようになったところで、ちょうどタイミングよくAWSの東京リージョンでもAmazon Virtual Private Cloud(Amazon VPC)が利用できるようになりました。これで、クラウドの可用性に加えてセキュリティも担保できるようになりました。

秋永 情報セキュリティの担当者と実装アーキテクトがAWSの仕様を研究しつつ、どうしたら社内のルールを守りながらクラウドを使っていけるかを考え、徐々に広げていったというところです。今回のドコモ・クラウドパッケージは、そうやってわれわれ自身が3年間クラウドを利用するなかで経験してきた、どういう体制で取り組まなければいけないか、社内の理解をどうやって得るのかといったノウハウや、それらのプロセスで使えるツールをパッケージにしたものです。

局舎のルールは決まっているがクラウドは手探りだった

──クラウド導入のノウハウは、cloudpackでもここ5年間積み上げてきたところだと思います。それにプラスするかたちで今回、ドコモ・クラウドパッケージの販売も行う。これにはどんな狙いがあるのでしょうか。

中川 当社では従来、ウェブサービスやゲームのインフラとしてAWSを利用される案件を取り扱うケースが多かったのですが、最近はエンタープライズのお客様が急速に増えています。しかし、この分野ではまだまだクラウドに不安をもたれているケースが多い。そういうときに、われわれが「AWSは大丈夫です、信頼性があります」と説明するよりも、「ドコモさんも3年前からAWSをお使いになっています」というかたちでドコモ・クラウドパッケージをご紹介すると、安心感をもっていただける。結果的にcloudpackのサービスももっと使っていただけるようになると考えています。

秋永 今、現場の担当者レベルで「今度のシステムはクラウドでやりたい」という話が出てくることはよくあると思います。それでcloudpackさんにまず相談されて、「よし、AWSでいこう」ということになる。しかし、この話を社に帰って上司に説明すると「個人情報の取り扱いはどうするんだ」などといわれて“撃沈”することがままあるはずなんです。それに対して、ドコモ・クラウドパッケージには「こうすればクラウドでも経産省のガイドラインもクリアできます」といったことが具体的に書いてあるので、社内の説得にもお役立ていただけるかと。

──cloudpackを利用するなかで、ユーザー企業であるドコモ側にクラウド活用のノウハウが蓄積され、今度はそのノウハウがcloudpackのビジネスにも活用される。まさにクラウド時代らしい双方向のパートナーシップのようにみえます。

秋永 従来、情報システムの業界ではユーザー企業が発注側、SIerが受注側で、開発から運用までSIerに丸投げして責任を負わせるといったかたちを考える人も少なくなかったように思います。でも、AWSではそういうかたちにはなり得ない。なぜなら、発注側が「SIerが全部責任をもってくれないと困る」という考えを示したら、SIerとしては本来責任範囲でないAWSの部分まで、何かあったときの費用や体制を準備しておかないといけなくなり、クラウドなのに高くて時間もかかってしまう。

 単に技術をクラウドに変えればいいのではなく、ユーザー側も自ら責任をどうやって負っていくのかという考え方が根づいていないと、サービスの提供を迅速化するとか、コストを安くするとか、そういったメリットが得られなくなってしまいます。

中川 ドコモさんにはそこをきちんとご理解いただけたので、「何かあったらどうするんだ」という発想から入ることはなく、「こういう対策があれば障害があっても大丈夫ですよね」というように、クラウドの利点をより引き出す方向で前向きに話を進めさせてもらうことができています。

秋永 われわれが目指すスマートライフの実現に向けて、これからさらにいろいろな業界の方々とお話をしていかなければならないと思います。パブリッククラウドに関して、われわれはあくまでユーザー企業ですので、もしクラウドの導入を躊躇されている方がいらっしゃったら、同じ立場からクラウドの導入をcloudpackさんと一緒にお手伝いしていけたらと考えています。

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